息子から尊敬されても困る

子どもが生まれると、「子どもから尊敬される親になりたい」と思う人は多いのではないでしょうか。子どもから口ごたえなどをされると「親に向かってなんて口を聞くんだ!」と怒る人も少なくありません。しかし、下田美咲さんは「子どもは親を尊敬するべきだと考えたことは人生で一度もない。息子から尊敬されても困る」と主張します。一体どういうことでしょうか?

私自身は言われたことがないけれど、「親に向かって何てことを言うんだ!」とか「親に対してその口の聞き方は何だ」という類のセリフは、どこの家庭でもしょっちゅう飛び交っていて、世の中には「子どもは親を尊敬するべき」という価値観を持つ親が多いのだと思う。

私が育った家庭でも、その手の言い回しは何度か耳にしたことがある。私以外のきょうだいが、度を超えた悪態をついた時などにそうやって叱られていた。叱る時の言い回しには価値観がよく表れる。

しかし私は、「子どもは親を尊敬するべき」だと考えたことは人生で一度もない。理由は複数あるけれど、そもそも家族間の尊敬なんて完全に幻想だと思っている。

だから実際、子どもとして育てられていた頃も両親を尊敬していなかったし、親になった今は、息子に尊敬されても困ると思っている。

どう考えても、親より子どものほうが上

「尊敬しろ」というスタンスで子どもに接する多くの親は、自分のことを子どもより上の立場だという前提で話をするけれど、私は、親と子どもの間に上下関係があるとするならば、どう考えても、子どもの方が上だと思っている。少なくとも、私と息子なら、息子の方が上。

だって、息子は私に感謝するべきことなど一つもないけれど、私には息子に感謝していることが山ほどある。

生まれてきてくれて、私のことを親にしてくれたこと。こんな世の中だけど、毎日ちゃんと生き抜いてくれていること。

子どもの可愛さと子育ての楽しさを教えてくれたこと。

歩くところが見てみたい、喋り出すところが見てみたい、どんな大人になるのかすごく気になる。そんな風に楽しみな予定を山ほど与えてくれて、まだまだ生きていきたいと思わせてくれたこと。死ぬわけにいかない理由になってくれたこと。

私は息子に「ありがとう」という気持ちしかない。こんなに幸せにしてもらっては、仮に一生スネをかじってもらっても、まだまだ返せないほど息子には恩がある。どれだけ恩返しをしても足りない。

社会的にも私より息子のほうが価値が高い

それに、社会的に見ても、私より息子の方が上だと思う。もし私が、息子の養育を放棄したとして、息子には引き取り手がいくらでもいる。身内を見渡しても「こんな顔が可愛い子なら育てたい。くれ」と本気で言っている人がいるし、幼い子どもには里親制度なども存在するわけで、もう育ちきった私と違って幼い息子には需要がある。可愛い赤ちゃんを欲しがっている人は世の中にたくさんいる。

現時点で、今から私の親になりたいと挙手する人はいないと思うけれど、息子の親になりたがる人はいる。その時点で、私より息子の方が一般的には価値がある。

そういう意味では、犬や猫もそうで、私は犬を飼っていた時も、自分と犬なら犬の方が上だと考えていた。私の方が上の理由など一つも思いつかなかった。

だって、犬は売り物になる時点で、人よりすごい。何十万で買ってもらえる上に、無条件でお世話をしてもらえるなんて、よほどの価値があるからだし、それに比べると、多くの人間には全くそれほどの価値がない。街中に溢れかえる人たちのどの人にしたって、仮に大金をもらっても引き取りたくない。

「犬より飼い主の方が偉い」と言う人を見るたびに「具体的にどこがだろう。その根拠は一体」と不思議に思っていた。商品になれるほど可愛いのだから、犬は人よりすごい。

そんな感じで、私は息子から尊敬されるほどのものじゃないとして、ではどう思われたいかというと、ただ好かれたい。「大好き」と思われたい。

「尊敬する人は親です!」と言う人は……

尊敬に関しては、されてしまうと少し怖いとも思う。

昔から、「尊敬する人は親です!」という人を見ると「それはあなたの目が節穴で、あれもこれも見落としているか、親が色々と隠しまくりで、取り繕いすぎなのでは」と思っていた。つまり親のことを知らなすぎ。実像を知っているとは到底思えない。

家族という至近距離で暮らしていて、尊敬が生まれるって変だと思う。よその人ならカッコつけた姿だけを見せることもできるし、ファンくらい距離がある相手ならばいくらでも印象を操作することができるから尊敬される機会もあるとは思う。

だけど、24時間一緒にいる間柄となると、情けないところも、ずるいところも、間違えてしまう瞬間も、キモい姿も、「人間だもの」な一幕も、どうしたって見せることになるから、尊敬に値する人として自分を演出できない。家族には、どうしても色々とバレちゃう。というか、あれもこれも隠さなきゃいけない相手と同居するのは疲れるからバラしていかないとキツい。

少なくとも私の実像は、尊敬に値するような立派なものではないから、尊敬して欲しいとは思わないし、「尊敬してる」と言われても「身に覚えがない」ってなる。

近しい人からは「可愛いなぁ」「仕方ないなぁ」「キモいね。笑」「も~」という感じで愛されて許されたい。それが理想。極論は、嫌われていなければ何でもいい。

息子に「パパはすごい人なんだよ」と言う気もない
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下田美咲の口説き方

下田美咲

下田美咲さんという女性をご存じでしょうか。13歳からモデルをしながらも事務所には所属せず、自宅の車を宣伝カーに改造してゲリラパフォーマンスを行ったり、「飲み会コール動画」などのオリジナル動画を180本以上手がけてYouTubeにアップ...もっと読む

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rid_kyon 下田さんの話、全部すき…今まで考えてたこと文にされててスッキリ感ある https://t.co/j1OsT6dkvI 2年弱前 replyretweetfavorite

harucas 日本人がどうかは置いておいて、マレーシアの友人達は男女問わず笑顔で自分らの子どものことを『my boss』とか『家族の中で1位』的なことを言ってて(甘やかすという意味ではない)、自然にめっちゃ大事にしてる感がすごくてなごむ https://t.co/3oRkG2EMCG 2年弱前 replyretweetfavorite

rion_ammy |下田美咲 @shimodamisaki |下田美咲の口説き方 ずっと疑問だった、親孝行ってなんでしなきゃいけないのかなって。 そう思うのは私だけじゃなかったんだな。https://t.co/yBpNJWGpgD 2年弱前 replyretweetfavorite