ビジネスの「習慣化」についてみていきましょう。
20世紀では栄えてきた脳への刺激を利用した習慣化ビジネスですが、ジャーナリズムや政府やNPOの介入により、減少傾向にあります。
タバコ業界でも、大手P社は将来的な紙巻きタバコからの完全撤退を掲げていますし、大手チェーン店は異物混入により、安全への配慮が求められていますし、米国でも「オバマケア」など公的な機関への保険制度の移行が行われています。
20世紀のビジネスは標準化によってプロセスを単純化し、画一化によって商品を匿名化、習慣化することで、顧客の生命すなわち有機物を無機化する行為でした。
これは、もう少し概念的に見ると貨幣と資本という切断機によって、有機物を無機物に変える行為そのものでした。
では、21世紀の社会的欲求を満たしたビジネスの例をいくつか見ていきましょう。
価値概念の変化──需要と供給から文脈価値へ
価値流通の手法が変化すると、価値概念も変化してゆきます。
図を見てください。
需要と供給で決まる一般的な価値概念は経済のお金の定義ですね。
消費者の需要量と、生産者の供給量で価格が決定するというものなのですが、取り扱われる財やサービスが承認欲求を満たすものへと変化する過程で、この前提は当てはまらなくなっていると思います。なぜなら、承認欲求を満たす際に、消費と生産という境界線は曖昧になっていくからです。例えばホームパーティーの参加者はみんなが消費者でみんなが生産者でしょうか? もちろんわけられません。参加者すべてが場を盛り上げ価値を創り出し、それをみんなでわけあうのです。
文脈価値は、つながりと物語の二つの要素よって成り立っています。空間軸的には送り手から受け手に、時間軸的にいうと過去から未来へと対象物が移動する際に価値が生まれます。つながりとは財に関係する人間間の関係であり、物語とは一定の期間を経ることによって蓄積される価値のことです。すなわち文脈価値とは、時間の連続性と他者との一体性の複合体なのです。
21世紀に人が求めるもの──社会的欲求
それでは、21世紀の新しい産業構造について話しましょう。
21世紀の消費行動は、「機能消費」と、「つながり・物語消費」に明確に分かれてくると思われます。それを前提とすれば、今後、業界の構造は、「何を売っているか(モノ)?」ではなく「何の欲求に応えるか?(コト)」を中心として区分けするのが重要になってきます。
さきほどのユニクロやセブン&アイなどはインフラ化し生存欲求のために機能的に消費されていきます。そして社会的欲求の段階が、二一世紀のビジネスです。ユナイテッドアローズやSHIPSなどはユニクロと同じ衣服を提供していますが、機能ではなく社会的欲求つまり憧れや承認、つながりを提供しています。ですから、これらの産業をみてゆくときには何を提供しているのか、という業界軸ではなくどういう欲求に応えているのかを見ていく方が有効だというわけです。
社会的欲求を憧れ、承認、つながりの三つに分類し具体例をあげてみましょう。