空間から時間へシフトした後、次の大きな変化は、経済です。
人間は、自然に生命の安全や食の欲求が満たされると、社会的承認の欲求を求めるようになります。いわゆる衣食足りて礼節を知る、というものです。今、先進国に住む人の欲求は生存欲求から社会的欲求へと急激にシフトしています。それに呼応して当然経済も変化しています。
欲求構造、財の形態は連動して変化する
社会で求められる欲求が変化することで、それを提供する財が変化し、価値流通の手法が変化していきます。財とは経済学の用語で、経済で人々が求める価値あるモノやサービスを表します。今後の流れをこの図に沿ってみていきましょう。
20世紀のビジネスでは、生存欲求を満たすものが多くありました。しかし21世紀に入ると巨大企業が独占し、インフラ化し、この欲求段階における財はもはやビジネスの中心ではなくなってきました。
最下位の生存欲求が満たされた我々はさらに上段の欲求、すなわち承認欲求へと変化していきます。欲求が変化するとそれを満たす財も変化していきます。実際に、私達の所得は減少傾向にあるにもかかわらず通信費は大きくなっています。2003年から2014年にかけて家計所得は320万から302万へと減少した一方で、家計に占める通信費は3.28%から3.77%へと逆に上昇しているのです 。生活保護世帯でさえ、これらの社会的欲求を満たすための財への支出はエアコンや食費等、生存に近い衣食住などの原始的欲求を削ってでも支出する項目になっています。これは、社会的尊厳を保つための出費です。
社会的欲求を満たすこれからの財とは何なのかということを、今あるビジネスの例を見ながら考えてみましょう。またその財を流通させるための手段はお金からどのように変化していくのでしょう?
まずは、20世紀までと21世紀からのビジネスをざっくりと比較してみましょう。
20世紀のビジネスの基軸は標準化・画一化・習慣化の三つでした。業務を標準化して効率を追求し、商品を画一化して世界中に送り込み、そして、顧客が継続して購買するように習慣化させようとしてきました。
しかし、21世紀のビジネスは多様化・個別化・肯定化へと向かっていきます。
標準化・画一化の行き先
私達の生活をよく見渡すと、衣食住などの基本的な生活インフラは余剰の状態にあり、お金を払って買うものではなくなっています。
現に、国内の住宅の空室率は20%を超えていくという予測が有力ですし、乗用車の保有台数は、5000万〜6000万台で10年間変化がありません。これはつまり、家も車も余っているということです。20世紀は、生命保険と家は二大消費でしたが、今後は違います。余っているものをどのように運用させてもらうかが大切になってきています。