「そっちは順調らしいね?」
イベントの打ち上げ終わり。東京は中野の狭すぎるアパートの一室で、2年ぶりに向かい合ったター坊ことカンニングの竹山は、思っていた以上に元気だった。
「う、うん。でも東京のイベントって、いつもあげなことすると?」
「割と多いかな。俺も最初はびっくりしたよ」
一観客としてカンニングが出演するイベントを客席から見ていたこの日の僕は、
最初から最後まで、目に入ってくる光景が不思議で不思議でたまらなかった。
会場となった深川座は客席が畳敷きで、その造りは博多温泉劇場を彷彿とさせた。
カンニングはトップバッターだったから、意図的に目を伏せると、
ター坊・ケン坊が博多温泉劇場のトップを務める光景が瞬時に甦ってくる。
しかし、ここは東京なのだ。
ほぼ満員の客席を埋めているのは東京の人であり、カンニングの後に次々と出て来たのも、標準語の漫才やコントを披露する、見慣れない東京の若手芸人だった。
その中にはテレビで見たことがある笑組さんやホンジャマカさんも混じっていたから、客席の僕は終始、どこか遠い国に来ているような錯覚に陥っていた。
「すぐに打ち上げがあるから、そこで合流しようよ。終わったら外で待ってて!」