なんだかよくわからないまま解散して、大騒ぎのなか行われた、昨日の衆議院選挙。実はフランスに住んでいる日本人にも、ちゃんと投票ができる仕組みがあります。投票所は、パリの凱旋門の真横という超高級エリアにある日本大使館。ちゃんと投票を忘れないように、事前にメールまで送ってくれるのは、さすが日本式。こんなご丁寧な制度があるにも関わらず、私はいまだに日本の政治や選挙に興味が持てないままいます。
それなのに、フランスに来てからというもの、選挙権もないのに、すっかりフランスの選挙や政治に興味を持ってしまっているのです。それはなぜかというと、フランスの政治や選挙って、日本とは違って「面白い!」と思える理由がたくさんあるからなのですよ。今回は、その理由について紹介しながら、日本とフランスの選挙と政治の文化の違いや、似ているところを垣間みてもらえたらと思います。
「選挙で、世の中は変えられるかもしれない」
まず最初に、私がこの国の政治に興味を持ったのは、衝撃的な体験があったからです。それは2012年のフランス大統領選。当時の大統領ニコラ・サルコジ VS フランソワ・オーランドの決戦日のことでした。
私はフランスに来てまだ2年目。フランス語は今より全然わからない状態でした。けれども、周りのどんな人でも選挙について興味を持って話をしていることや、いかに多くの人がサルコジ元大統領にうんざりしているかは感じとることができました。そして、選挙結果の出る当日20時の15分前に、旦那さんと一緒に近所でレンタル自転車をピックアップして、バスティーユ広場を目指したのです。
バスティーユ広場といえば、フランス革命が起きた歴史的スポットでもあり、いまでも集会やデモがある時には、なにかと人が集まる場所です。この広場につながる大通りにさしかかった頃。車が一気に減ったことで、広場のまわりでは、既に車道が封鎖されていることがわかりました。そして、立ち去り損ねたのか、残された数台の車からは、一台、また一台とクラクションの音が響き始めたのです。 何が起きたんだろう!?と慌てる私を横目に、旦那さんは一言「あ、オーランドが勝ったね」とだけ言い、自転車のペダルをこぐ足を速めました。
すぐにバスティーユ広場の入り口が見えてきたのですが、いつも車が循環する大きな石畳の交差点は、人、人、人で埋め尽くされており、広場のシンボルである塔には、どうやってよじ上ったのか、蟻のように人が群がっていたのでした。よく見ると、信号機にまでよじ上って興奮している若者がおり、それぞれが手にしたフランス国旗のはためきに、「フランス革命って、こんな感じだったのかな!?」と、胸の高まりを感じました。そして私たちも、人の海へあっという間に飲み込まれていったのでした。
選挙だと言われなければ、設置された巨大スクリーンやステージ、集まっている人のお祭り騒ぎに、コンサート会場にいるかと見紛うような感じでした。(実際、演説後はオーランドが属する政党が招待した歌手などのコンサートが開催されて お祭り騒ぎになる)しばらくして、オーランド氏の演説が巨大画面に映し出され、この日の熱気はピークを迎えたのでした。
なんといっても、この日私が味わったのは、「音を立てて、今日からフランスは何かが変わる。選挙で、世の中が本当に変わるかもしれない」という実感でした。こんな体験は、人生で初めてのものでした。
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