後輩芸人のおたこぷーによる視聴者参加型コーナー「おたこ体操」が起爆剤となり、僕たちがメインの新番組「とことんサンデー」は開始直後から爆発的な人気を呼んだ。
今よりも遙かにテレビが見られていた時代だったとはいえ、とこサンの視聴率は最初から信じられないぐらいに好調だった。
天神中央公園でのイベントを境に、視聴率は平均で二桁を常にキープ、良い時だと13~4%は普通に取っていたから、日曜日の午前11時から始まるローカル番組としては上出来過ぎたと思う。
そんな状況が毎週のように続いていたから、とこサンをキッカケに僕たちは「認知度」という、芸人にとって喉から手が出るほど欲しい武器を、いとも簡単に手に入れてしまった。
年齢的なものもあっただろうし、見せるべき「芸」もなかったのだろう。
そして何より、僕ら以外に選択肢がなかった「あの頃の福岡」という、圧倒的な時代のアドバンテージに尽きると思う。
いつの間にか僕たちは「アイドル的な人気を誇る、福岡の吉本若手芸人」という肩書きをつけられ、凄まじいスピードで福岡県内という限られた世間に浸透していった。
福岡吉本が主催する自主イベントのチケットは即完が当たり前。
ショッピングセンターなどの営業に呼ばれると、そこは常に黒山の人だかりで、黄色い歓声に包まれた会場の警備が追いつかないと、時に主催者側が大慌てするほどだった。
さすがに街を歩けないことはなかったが、しかしそれでも、5人とすれ違えば3人は振り返るような状態だったから、僕たち福岡芸人の人気ぶりは、当時の福岡県内のみの話だが、少しだけ大げさに「社会現象」とまで呼ばれていた。
ほんの少し前までは、入るのも憂鬱だった事務所の稽古場。
しかし今は同じ場所に、各個人の名前が書かれた段ボールがうず高く積まれている。
その中身は、僕ら宛に届けられたファンレターやプレゼントの数々だった。
そんな好意の山を眺めていると、あながち「アイドル的な人気を誇る」という謳い文句に間違いはないのだろう。
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