前回に引き続き、日本の職場でフランス人の彼と出会ったCさんの、パリ移住体験を紹介します。
そもそも、パリにまったく興味がなかったCさん。彼と一緒に生活するために移住して2年が経過したころ、Cさんは36歳になりました。パリにやってきたばかりの時は、先のことはあまり深く考えていなかったそうですが、さすがに3年目のパリ生活を目前に、「結婚」や「出産」を意識するようになったと言います。そこでCさんは単刀直入に、彼に「これから私たちはどうなるのか?」と相談したそうです。
結婚後に待ち受けていた、ガンという病
Cさん 彼に話をしたら、これから一緒に居続けるためにも、結婚するのがいいねとなったんです。それから彼が色々と書類やら事務手続きやらを進めてくれて、スムーズに結婚することになりました。こんな風に話し合いの流れで結婚になったから、実はプロポーズもないままなんですよ。
今回インタビューを受けてくれたCさん
ちょっと残念そうに語るCさんですが、日本からパリに両親を呼び寄せ、役場でささやかな結婚式を無事に挙げ、念願の新居に引っ越し、二人の新生活をスタートさせることになりました。ところが、結婚式を挙げる前あたりから、Cさんは体の異変に気づくことになります。
Cさん 時々、生理でもないのに不正出血が起きるようになっていたんです。その時は、案外自分が感じていないだけで、身体はこれからの新しい生活や結婚準備に、ストレスや疲れを感じてるのかな? 落ち着いたら病院に行ってみよう、と思うくらいだったんですね。
でも病院で検査してみると、子宮頸癌の恐れがあると。とはいえ、まだそんなに進行していない、という診断だったんです。一番心配だった、今後子供ができるかどうかを聞いてみると、「子供はできます。大丈夫ですよ」と言ってもらえました。
その後、手術を受けることになったCさん。ところが、実際に手術をしてみると、最初に医者が言っていたのとは違い、状態は芳しくありませんでした。そして、Cさんが手術から目が覚めると、衝撃の事実を知らされることに……。
Cさん 手術後、麻酔が切れて目が覚めてみたら、医者から「状態が良くなかったから、子宮摘出の手術になりました」と伝えられたんです。その時、もう子供ができない身体になってしまった、ということを知りました。しかも、手術の際に足の付け根の神経も傷つけられてしまって、リハビリが必要ですから、と紙っぺら一枚を渡され説明は以上、という状態だったんです。
結婚して落ち着いたこれから、ようやく彼と二人で子供を育てて、苦手なフランス語も自分の子供と一緒なら頑張れるかもって、これから先のことをあれやこれやと考えていたのに、それができなくなっちゃった……。なにより、彼に対して、子供を産めなくなってしまったことが申し訳ないという気持ちでした。
彼はその時まだ30代前半。他の女性とやり直すことだってできるはず。だから、私、彼に「別れよう」って切り出したんです。
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