大企業に投資すれば安全なんじゃないの?

ひふみ投信のファンドマネージャー藤野英人さんによる株式投資入門。第3回目は、「無名企業よりは有名企業に投資するべき?」といった疑問を解決していきます。「28歳の姪ユリコ」と「投資ファンドの運用担当をしている叔父」の物語形式でお楽しみください。

知識ゼロから株式投資を始めようと思い立った28歳会社員のユリコは、ファンドマネージャーの叔父に話を聞きながら、「投資」の基礎を勉強中。初心者すぎるユリコは「株を始める前にこれだけは知っておくべきことがあったら教えて!」と叔父さんにお願いしますが、叔父さんは「何も勉強しなくていい」と言ってきて……。
前回「
初心者はデイトレしちゃダメなの?」はこちらからどうぞ

証券口座は「近い」ところで作ろう

ユリコ 叔父さん、今日もよろしくお願いします。

叔父 はい、よろしく。

ユリコ この間話を聞いて、「さあ株を買おう!」と思ったんですけど、重大な問題に気づきました。証券会社に口座を開設すると株が買えるというところはわかるんですが、証券会社っていっぱいありすぎてどれを選んだらいいかわからなくて。

叔父 ぼくはいつも、「近い」ところで作りましょうとすすめてるね。

ユリコ 家の近くにある店舗ってことですか?

叔父 「近さ」には物理的な距離と心理的な距離の両方があるんだ。だから、ユリコちゃんが70歳のおじいさんとかだったら駅前の証券会社が「近い」と感じるかもしれないけど、ユリコちゃんにとっては足を踏み入れにくいんじゃない?

ユリコ それはたしかに……。

叔父 投資は人と対話しながらやりたい! ということなら証券会社の窓口がベストだけど、ユリコちゃんは毎日ネットに慣れ親しんでるだろうし、インターネットで取引できる証券会社のほうが「近い」んじゃないかな。

ユリコ わかりました! じゃあ手数料やサービスを比較してインターネットで取引できる証券会社で口座を開設してみるか……手数料が安いところがいいなあ……。(スマホをいじりながら)えーと、なんか、口座にもいろんな種類があるんですよね。特定口座? 一般口座? それに……NISA?

叔父 ああ。そこが、投資初心者のつまずきやすいところだよね。いろいろあるんだけど、基本的に、年間の取引金額が120万円以下だったら、NISAがおすすめかな。

ユリコ で、このNISAっていうのは……? 「少額投資非課税制度」の略らしいですけど。

叔父 それは、年間の取引金額120万円までの投資で得た利益にかかる税金がゼロになる仕組みなんだ。この前も話したけれど、今の日本政府は国民にタンス預金を放出してほしいので、投資を促す政策をいろいろやっていて、NISAもその一つ。通常は、株の利益に対してかかる税金は20%だから、NISAを利用しない手はないと思うよ。

ユリコ なるほど! じゃあ私の場合は、特定口座(源泉徴収あり)でNISAを利用したいという申し込みの仕方をすればいいわけですね。しっかし、株ってそんなに税金とられるんだ……。

叔父 一応注意しておくと、NISAの限度額っていうのは「1年の取引金額の合計」を意味している。なので、ユリコちゃんが50万円だけ口座に入れているからといって、NISAの限度額を超えてしまうことはある。どういうときだと思う?

ユリコ えーと、その50万円で1度株を買って、売って、もう1回買って……というを1年に3回繰り返すと、取引金額の合計は150万円になる?

叔父 そのとおり!

ユリコ つまりデイトレやスイングだと、NISAの利用はむずかしいんですね。

叔父 そう。NISAの得を活用できるという意味でも、初心者には長期投資がおすすめなんだ。

株は「習うより学べ」の精神でOK

ユリコ さて、証券口座の申し込みはするとして……。初心者が投資を始めるときは、「小さくゆっくり長く」がいいというのは聞いたけれど、他に株を買う前に知っておいたほうがいいことってありますか? 調べると「時価総額」とか「PER」とか、いろいろ細かい用語があるらしくて、不安になってきたんですが……。「これだけは勉強してから始めるように」ってことがあったら教えてください。

叔父 「時価総額」はその企業の規模を見る指標で、「PER」は、現時点での株価が割安なのか割高なのかを判断するためのものだけど、ぶっちゃけて言えば、「何も勉強しないで今すぐ買っていい」です。

ユリコ えー!? 本当ですか? 「今は割安」とか「このチャートは危険」とかあるんじゃないですか。株価チャートのかたちから株価を推測するテクニカル分析の勉強も必要なのかと思ってたんですけど。日経平均株価を見たりとか……。


叔父 そういう用語を知ってるということは、この前よりも勉強したんだね。もちろん、ユリコちゃんがテクニカル分析に興味があるなら勉強してもいいけど、そんなことをしているといつまでたっても投資できないよ。すべてを完璧に理解してから投資するっていうのは不可能だから。

ユリコ うーん。

叔父 株価も市場の地合いも永遠に変化しつづけているわけだから、「勉強してから……」「確信が持てるようになってから……」と思っていたら、長縄跳びをずっと見ていていつまでも入れない人になってしまうよ。そうだな、水泳にたとえてもいいかもしれない。ユリコちゃん、たしか子供のころにスイミング教室に通っていたよね。水泳をするときに、「3年間勉強してからプールに入りましょう」とはならなかったでしょ? まずはプールに入るところから。そういうことなんです。

ユリコ でも、失敗したくないので、勉強しておいたほうがリスクを減らせるんじゃないかと思って。

叔父 もちろん勉強は大切。ただ、株式投資における一番の勉強は「実際に投資する」ことなんだ。株式投資というのは「勝つか学ぶか」の世界なんだよ。

ユリコ 勝つか学ぶか?

叔父 つまり、どう株価が動いても、それはすべてユリコちゃんの学びにつながるんだよ。「あ、業績が良くなったから株価も上がるのか」とか「株価が下がったけど、もしかして……社長の不祥事がニュースになったせい?」とか。もちろん、株式を持っていない状態で、ある銘柄を追っておくというのも勉強にはなるだろうけど、その銘柄を持ってるか持ってないかで、自分の身にしみる度合いが全然違う。

ユリコ そう言われると、そんな気もしますね。自分の勤めている会社がつぶれるって話はすごい心配になるけど、そうでなければ「心配だなあ」くらいになっちゃうのはあると思うし。株を持つというだけでも、その会社のことを「自分ごと」に感じられるようになるということか。

叔父 そう。最初はちょっと溺れちゃうのも前提で、マーケットという「プール」に入ってみるのが一番大事なんだ。そもそも、だからこそ「手に汗をかかない金額」でやろうと言ってるわけだし。もし株価が下がるにしても、会社が倒産しない限り価値がゼロになるということはないからね。よく調べて1000万円分の株を買うよりは、調べずに1万円分買うほうが安全だと思うよ。

無名企業よりは有名企業に投資するべき?
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誰でもできる株式投資入門

藤野英人

ひふみ投信のファンドマネージャー藤野英人さんによる、株式投資の入門連載です。投資には興味があるけど、どうやってはじめたらいいかわからない、というひとに向けての内容です。投資ファンドの運用担当をしている「叔父」が、姪の「ユリコ」に、投資...もっと読む

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