コミュニケーションを通じて芸術が完成する
柴 そういえば、こないだ、新曲を出したじゃないですか。資生堂「アネッサ」CMソングの。
ぼくりり はい。「SKY's the limit」ですね。
柴 あの曲の歌詞の〈”幸せそう”を追いかける自分を〉とか〈この一瞬の私がすべて〉とか〈画面越しの世界だけ〉とか、これってインスタグラムにハマって「インスタ映え」する写真ばっかり撮ってる女の子のことですよね。
ぼくりり はい。
柴 しかも面白いのは、そういうインスタにハマったりSNOWで自撮りを盛ったりするような女の子を思いっきり肯定しているような曲になっている。〈どの一瞬も私は私〉〈“本当は”なんて意味ないよ〉〈太陽浴びて i gotta post my picture〉〈一番きれいな君で 笑って〉ですからね。
ぼくりり そうです、そうです。
柴 今の時代、そういうのに「がんばって盛っちゃってるよね〜」みたいな揶揄とかツッコミをする人のほうが多いじゃないですか。
大谷 お笑い芸人だってそうですよ。どれだけ状況を俯瞰で見てツッコみを入れられるかがおもしろさだった。でも今はちょっと変わってきてて、自分が楽しいと思ったらどんどんそれをやっちゃうほうがおもしろくなってきてる。
柴 はいはい。
大谷 こないだも「彼氏とドライブなうに使っていいよ」みたいにして写真をアップするブームみたいなのがあったじゃないですか。上の世代の芸人はああいうのを見て後から「ダサいよな」ってテレビでツッコむような人が多くて。でも大地さんはちゃんとやってるんですよ。それ見て、やっぱり大地さんすげえなって。
柴 ははははは! ちゃんとやってる(笑)。ただ、ぼくりりさんは、今の話で言うと、特に最初は俯瞰で物事を見ている感があったんですよ。
ぼくりり あー。はいはい。
柴 「世の中全員バカばっかりだし」みたいな。
ぼくりり ははは、僕が実際にそう思っているかはともかく。
柴 そういうイメージがあった。だけど、新曲を聴いたら「ちょっと変わったかも?」って思ったんですよ。インスタで盛る女子たちを肯定してる。
ぼくりり 今はけっこうそんな感じですね。クリスマスも同じ構図だと思うんですよ。最初に「クリスマスは彼氏と彼女で楽しく過ごそう」というのがあって、それに対するカウンターとして「リア充爆発しろ!死ね!」みたいな人たちが出てきた。
最初は少数派のおもしろい人たちがやっていたからよかったんですけど、そういうシニカルなツッコミが「おもしろいぞ」という風になって、だんだん一般の人が群がっていって、どんどんつまらなくなっていった。
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