翌日の朝、久しぶりに、彼は時間通りに学校に行った。
こっちを見て驚いた顔をするクラスメイトに、おっす、おっす、と挨拶しながら、自分の席に着く。
「おー、早いな、モリ」
「おお、お前もな」
隣の席には土岸が座っていた。テストでもないのに、二人が揃って始業前に学校にいるというのは、なかなかの珍事だ。
「昨日、まじでおれが悪かったよ」
土岸は真面目な顔をして言った。
「母ちゃんにも謝っといてくれよ。もう二度としないって」
「ああ。だけど別に、お前だけが悪いわけじゃないからな」
小森谷くんは、ふう、と息をついて、椅子にもたれた。
三人で悪いことをして、三人で怒られるのはまだよかった。殴られてもよかったし、何年かタダ働きをしてもよかった。
だけど、いちばん傷ついたのが母親だったことは、さすがに堪えていた。
「お前の母ちゃん、ゆうべは大丈夫だったか?」
「……ああ」
「泣いてたりしてなかったか?」
「……夜中まで泣かれたよ」
「そうか」
不思議な感じだった。眉根を寄せた土岸が少し苦しそうな表情になって、彼を見つめている。彼の母親を泣かせたことに、土岸が痛みとか責任を感じている。
「お前んちは、大丈夫だったのか?」
「ああ。うちは事後報告だけだから。がつんと怒られたけど」
今まで悪いことをした代償は、怒られたり、何か自分に不都合なペナルティを課せられたり、といったことだった。だがそんなのは凄く小さなことだった、とわかった。
ショックを受け、傷つく母親の姿は、もう二度と見たくなかった。
「真人間になろうぜ」
と、土岸が言った。
「ああ、そうだな」
と、彼は頷く。