メディアの3Cモデル
メディアは、文化を支える土台のようなものです。それは紙の雑誌だろうが、電波を受信するラジオだろうが、ネットのウェブサイトであろうが、なんら変わりはありません。かつて若者たちが深夜、小さなラジオ受信機を耳にあて、パーソナリティーたちのしゃべることばに夢中で耳を傾けたように、いまはネットの中に形づくられる文化圏に人々は集まり、寄り添いあおうとしている。
つまりメディアは、文化そのものであるといってもいいのです。
メディアは文化であり、その文化につらなる人たちが集まる空間をささえる構造である——わたしは未来のメディアをそのようなビジョンとしてとらえています。さきにわたしは「すべてがメディア化していく」と書きました。これはあらゆる場所が文化圏となり、たがいに共鳴できる人たちがそれらの場所に集まり、共同体的なものをつくっていくということなのです。かつて紙の雑誌がつくっていた共同体よりもずっと複合的で、多様なかたちで。その共同体は、一時的で限定的なものである場合もあれば、継続的で強い引力を持つ場合もあるでしょう。
このような新しいメディア像があらわれてくると、メディアの構造も変わってくるでしょう。このビジョンでは、もはやメディアを「インターネットか紙か電波か」といった区分けをすること自体があまり意味を持たなくなってきます。
インターネットが広まっていく段階にあった2000年代ごろまでは、ネットと伝統的メディアの対立構図というのはたしかにありました。わたしも当時はそういう議論をしていました。しかし2010年代に入り、SNSとスマートフォンが普及するようになって、その構図は急速に薄れてきています。
メディアの構図を、コンテンツ・コンテナ・コンベヤという三つの「C」で説明するモデルがあります。これは技術者の及川卓也さんが発案された考えかたで、「3Cモデル」と呼ばれています。コンテンツは記事や動画。コンテナはそれらの記事を運ぶ容器。コンベヤは容器のコンテナを配達してくれる媒体です。新聞と地上波のテレビは以下のように説明できます。