「この10年で、ウェブサービスやEC(電子商取引)の事業者は、どのユーザーがどのページから来て、どういう行動をしたかをかなり追跡・分析できるようになってきた」
そう語るのは、オンラインマーケティングに詳しいアジャイルメディア・ネットワークの徳力基彦代表だ。「顧客の心理を覗けるようなもので、これこそまさに経営者が知りたかった情報。今までは経験や勘でわかったつもりになっていたことが、データでわかるようになっている。一方、マスマーケティングをやっている大企業、特にメーカーは恐ろしいくらいデータを見ていないし、そもそも顧客データを持っていない。この点では、二極化が進んでいる」。
「顧客を知る」というビジネスの基本を突き詰める点で、オンライン、オフラインを問わず、小売りやサービスの現場ではデータ分析のニーズが高まっている。そして、データ活用に関して意識が高いか低いかということは、企業の命運を分ける重大事項となっている。
当然だ。漠然とした「大衆」に、経験や勘という曖昧な根拠で対峙していくのに対し、顧客一人ひとりの消費行動についてのデータを分析し、個人ごとの興味・嗜好まで把握した上で、未来の消費行動まで予測したり、好みの商品に誘導することができるなら、怖いものなしである。
それ故に昨今、ビッグデータという言葉に注目が集まり、それをマーケティングのキーテクノロジーとして活用しようという動きが高まっているのである。もっとも、いまのところは流行に乗っただけで、さしたる成果を出せていないケースが多いのも実態だ。
データ分析においては統計学の手法は不可欠である。ここでは、そうした統計学の考え方を、確実にビジネスに生かしている例を紹介する。
スポーツ
女子バレー、野球…
統計分析を駆使したチームづくり
28年ぶりの銅メダル獲得。昨年7~8月のロンドン五輪で、全日本女子バレーボールチームが快挙を成し遂げたことは記憶に新しい。
その偉業もさることながら、それと同様に人々の目に焼き付いた光景がある。眞鍋政義監督がタブレット型端末、iPadをコートに持ち込んで、指示を飛ばしていた様子だ(写真)。画面には自チーム、相手チームに関する分析データが映っていた。
iPad片手に選手へ呼びかける姿は、今や眞鍋監督の代名詞だ。選手の経験や勘とデータを結びつける。Photo:日刊スポーツ/アフロ
そんな「データバレーの勝利」の立役者として、一躍時の人となったのが、全日本女子バレーのデータアナリスト、渡辺啓太氏だ。