意見分かれる環境問題
怪しい時は引用元当たれ
カッコ~ン。静寂の中に響き渡る鹿威(ししおど)しの音。近所の口うるさいおばさんのしつこさに負け、計子は嫌々、お見合いの席にいた。
「ったく、なんで、おばあちゃんまで来るのよ……ぶつぶつ」「仕方ないでしょ計子、お父さんが急に風邪ひいちゃったんだから。すいませんねえ、お義母さん」「いえ、結構ですよ。私も存分に品定めさせていただきますから」
「え!?」。計子以上に数字や統計にうるさい祖母だけに、母の脳裏には一抹の不安がよぎった。
お見合い相手の男、金山金男はここらでは有名な地主で、家業の不動産業を継いでいる。常ににやついている小太りで、お世辞にも美男子とはいえない。
「いや~、まったく、今年は急に空気が汚くなって、たまりませんなあ。中国のほれ、にーてんご、でっか? 臭いますわあ、空気が」。東京生まれ東京育ちのはずだが、金山は鼻をクンクンさせながら、うさんくさい関西なまりで切り出した。
シーンとしてしまった場を和ませようと、計子の母親が無理やり受け答えする。「そうですねえ、ほんと、環境問題って頭が痛いですわね。私も毎朝、缶や瓶、ペットボトルの仕分けやらで時間を取られてしまってもう……」。
金山は遮って「あ、お母さん、それ、意味ないでんなあ。ペットボトルって仕分けても結局一緒に燃やしちゃいますし、再利用していないって、テレビでおエラい先生が言うてはりましたわ」。
イライライラ……。計子が「あ~! もう、ほっ統計(とけ)ない!」と言おうとした瞬間、「たわけー! もう、ほっ統計(とけ)ぬわ!」と叫んだのは祖母だった。