文月悠光
雨宮まみさんの遺したもの〈前篇〉
2016年11月15日、作家・ライターの雨宮まみさんが亡くなりました。女性性とうまく向き合えない生きづらさについて書いた自伝的エッセイ『女子をこじらせて』での鮮烈なデビュー以降、多くの読者に愛された雨宮さん。詩人・文月悠光さんも、読者として作家として私淑した一人だそうです。雨宮まみさんの遺したものについて、文月さんが向き合います。
昨年11月、ライターの雨宮まみさんが亡くなった。
Twitterのタイムラインを流れてきた訃報記事はにわかに信じがたく、幾人かの知り合いと「本当なのでしょうか」とメッセージを交わし合った。皆、突然の知らせに理解が追いつかず、混乱しているようだった。
その2週間前、拙詩集に推薦エッセイを書いていただき、ご本人から刊行のお祝いと励ましのメールを受け取ったばかりだった。
私が雨宮さんと直接お会いしたのは一度だけ。2016年9月25日、雨宮さんと岸政彦さんのトークイベント終了後のサイン会でのことだった。お二人の愛に会場全体が包まれているような、和やかなイベント。一読者としてトークを楽しみ、ご挨拶も兼ねて(まだ推薦エッセイを依頼する前だった)サイン会まで残ることにした。
「雨宮さん」と検索しても
「文月さん、ですね……!」
雨宮さんの背筋がすっと伸びた。丸帽子の陰から覗くまっすぐな目に、どきりとする。
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初詣から近所の八百屋、海外からストリップ劇場まで、JK詩人からの脱却を図った体当たりエッセイ集!
この連載について
文月悠光
〈16歳で現代詩手帖賞を受賞〉〈高校3年で中原中也賞最年少受賞〉〈丸山豊記念現代詩賞を最年少受賞〉。かつて早熟の天才と騒がれた詩人・文月悠光さん。あの華やかな栄冠の日々から、早8年の月日が過ぎました。東京の大学に進学したものの、就職活...もっと読む
著者プロフィール
詩人。1991年北海道生まれ。中学時代から雑誌に詩を投稿し始め、16歳で現代詩手帖賞を受賞。高校3年の時に出した第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』(思潮社)で、中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少18歳で受賞。詩集に『屋根よりも深々と』(思潮社)、『わたしたちの猫』(ナナロク社)。近年は、エッセイ集『洗礼ダイアリー』(ポプラ社)、『臆病な詩人、街へ出る。』(立東舎)が若い世代を中心に話題に。NHK全国学校音楽コンクール課題曲の作詞、詩の朗読、書評の執筆、詩作の講座を開くなど広く活動中。
Twitter:@luna_yumi
ブログ:お月さまになりたい。
ウェブサイト:http://fuzukiyumi.com/