エピローグ
1988年。秋葉原の駅前は、開発が進み、電気街に様変わりしつつあった。
中央口を出て少し歩くと、オノデンの看板が待ち合わせの目印となっている。
サトームセンや石丸電気など大手家電店は、店頭に新商品のビデオデッキとレーザーディスクプレイヤーを、ずらりと並べていた。
時代は、オーディオビジュアル機器の全盛期。
パソコンの人気は高まりつつあったが、カルチャーの中心にはやや遠く、まだ熱心な好事家たちのホビーに留まっていた。
マクロソフトやMEC、大富士通など各社の魅力的なコンピューターたちは、秋葉原の一角で存在感を放ちながら、デジタル世代の子どもたちを育てていた。
そして、来たるべきIT革命を、静かに待っていた。
秋葉原駅に隣接するように、電気パーツの専門店が軒を連ねていた。平日の昼間から、電気工作が好きな若い客が詰めかけていた。
専門店の並んでいる狭い通路を、ひとりの少年がすり抜けていく。
高校1年生の、堀井健史だ。
大通りに出ると、待っていたかのように、優作が立っていた。
優作は堀井に向かって手を上げた。
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