一般的に、何事も「他人と比べるべきじゃない」と言われている。
とくに「自分の夫を他の夫と比べるべきじゃないし、ましてや給料を比べたりするのなんて最低だ」という風潮は強いように思うし、「だって、隣の芝生は青く見えるものなんだから」と言う人は多い。
私は、自分の夫は他の男と比べまくるべきだと思っている。それはもう極力こまめに。
男友達に会うのは、比較対象のデータを集めるため
常日頃から、旦那さんのことはその他の男の人たちと比べまくっている。比べるためには比較対象が必要なので、そのためにいろんな男の人との交流を持つようにしているほどだ。
これは結婚前からだけども、男友達に会う時も、友達の彼氏に会う時も、恋人の同僚に会う時も、兄弟の友達に会う時も、自分の男との比較対象のデータを集めたい、という下心がどこかにある。
他人と比べない、ということは、自分の価値観だけで相手を測る、ということだ。それは、自分の理想と比べる、ということでもある。それって他人と比べるよりもよっぽど残酷だと思う。かなり非現実的なハードルの可能性がある。
そこはあくまで実在するその他の人間と比べてあげるべきだし、そうじゃないと相手がかわいそうだと思うので、私はとことん彼を他人と比べる。
たとえばお給料にしても、他の男と比べないと、自分の給料と比べることになる。
そうすると「私は26歳の時このくらい稼いでいたから、このくらいは稼げて当然」みたいなモノサシになってくるけれど、一般的な同世代は数分の1の月収であることを、たくさんの男のデータを集めたことで私は知っている。私の男友達で私と同じくらいに稼いでいる同世代は、去年も今年も、かなり少数派だ。
私と比べると彼は安月給だけれど、多くの同世代の男や、彼と同じ就職一年目の他の男と比べると、わりと良い方のお給料を稼いでいるし、ずいぶんと福利厚生のしっかりした会社を選んだ、と思う。
私は彼に対して「よくやってる」と思っている。よく頑張ってる、えらいえらい、そう思っているけれど、そこには「比較的」という枕詞が絶対にある。他の男と比較して、彼はよくやってる。
「売り物にならない顔はブサイク」
顔など容姿への評価もそう。
私は13歳でモデルの世界に入り、商品として成立する外見の人たちに囲まれて生きてきた。友達は基本的に、顔の良さだけでギャラが発生するレベルの美人とイケメンで構成されていた。そういう人生だった。
私の感覚で評価をくだすことになると「売り物にならない顔はブサイク」という基準になる。顔立ちに悪いところがあるから美人じゃないわけだし、パーツやバランスに変なところがあるからイケメンに満たないのであり、「美人イケメン以外は全部ブサイクでしょ。普通って何?」というのが個人的な価値観ではある。
とくに学生じゃなくなってからは、職業柄、普通の顔を見る機会も激減してしまったので、私の価値観はますます偏った。
しかし、仮に彼が「俺、モデルになりたい」などと言いだしたら「いや、売り物になる顔っていうのはね……」と説く必要もあるかもしれないけれど、そうじゃない限り、そんなに厳しい基準で評価するのは、意地悪であり、かわいそうでしかない。
一般的にどうか、という感覚で見てあげるべきだし、そうしないと「他の女といれば、俺はもっと高い評価をもらえるのにな」「美咲ちゃんと生きる人生だと、低評価しかもらえない」と虚しくなる日が来るだろう。
私は彼を評価するにあたって「クラスにいたらどうか」という視点を持つことを大事にしている。
その視点を持つことで、たとえば容姿に関しては「売り物レベルではないけれど、イケメン店長とか言われるレベル」とか「恋愛をするのに支障のない顔だち」とか「お父さんの中ではカッコいい方」などの評価が生まれる。
一般人のカラオケは全部オンチ
カラオケの歌などにしてもそうで、私は数年間、仕事として音楽活動を行っていた。
レコーディングではビブラートの玉の数まで指定されていたし、「語尾がフラットしてる」「ちょっとそこシャープしてる」など、ほんの少しの音程の狂いにも現場はシビアだった。ボイストレーニングや歌う現場を重ねた数だけ、歌を捉える視点が増えたし、音を聞き取る耳が発達した。
私の基準で、他人の歌のうまいヘタを測れと言われると、一般人のカラオケは全部オンチと言える。ひとつ前の音と高低差をつけただけで「高いところ出せた!」と判断するのが素人だけれど、実際は正しい音符のところまで届いていない。カラオケで正しくメロディーを歌えている人は超レアで、素人にはほとんどいない(私自身、だいぶ聞き取れるようにはなったけれど正しく歌えるわけではない)。
しかし、素人の歌をそんな基準で測るべきではない。クラスでカラオケ大会をやったとして何位くらいか、合コンで恥をかかないレベルに達しているか、というような視点で、聞いてあげるべきだ。
その視点を持つためには、多くの普通の人のデータが必要なので、積極的に人に会う。友達の友達だったり、彼の同僚などは、わかりやすい一般人なのでサンプルとしてとても良い。「世間とは、きっとコレだ」という、私の生活圏にはあまり登場しない中肉中背のキャラが私の関係者の関係者あたりまでマスを広げるとたくさんいるので、チャンスがあればなるべく交流を持つようにしている。