内と外を隔てないスタイル
かつてファッションは、「武装」「鎧」でした。自宅ではくつろいだ日常着であっても、ひとたび外に出かける時には、だれから見られても恥ずかしくないように武装し、備えなければならない。そのために人はおしゃれをしてきたのです。
それが極端に走ると、高価で最新流行の外出着はたくさんあるけど、自宅ではゆるい着古したジャージしか着ていない、なんて人もいました。バブルのころ、まだ自家用車を自分で持つのがカッコいいと思われていたころには、「貧乏だけど無理してスポーツカーを買って所有し、生活に割くお金がないので住んでる木造アパートでは毎日カップラーメンを食べている」なんていう無理無理の生活をしている若者もいたりしました。出かけるときはポルシェで颯爽と見栄を張り、でも家ではよれよれの生活。内と外を思いきり壁で隔ててしまう生活スタイルです。
ファッションもこれと似たようなところがある。外出して仕事に出かけるときやデートのときは、きちんとおしゃれしたい。でも家にいるときはだれも見ていないからいいじゃないか、っていうのはスポーツカーの若者と同じように、内外を分け隔てる生活です。
2015年にベストセラーとなった『服を買うなら、捨てなさい』(宝島社)という本があります。著者のスタイリスト地曳いく子さんは、誤ったおしゃれ観が広まってしまっていると書いています。