ストレスとは「強い感情」のこと
話を元に戻しましょう。ストレスとリラックスの落差があるほど、フロー状態に入りやすくなるという話でした。つまり、強いストレスをかけて、一気にリラックスすると、集中力が高まるのです。
ここからは、もっと具体的に「強いストレスとは何か?」についてお話ししていきましょう。 簡単にいうと、強いストレスとは「強い感情」です。
意外に思われるかもしれませんが、この場合、感情の種類は問いません。ネガティブでもポジティブでもOK。ストレスをかけるという点では、脳は感情を区別しないからです。「さあ、やるぞ!」というワクワクした気持ちでもいいし、「なんでこんな仕事をしなきゃいけないんだ!」という怒りでもいい。「締め切りに間に合わない!」という切迫感も強いストレスになります。
ちなみにアルバート・アインシュタインが一般相対性理論を完成させたときは、奥さんとの離婚訴訟の泥沼にありました。強烈なストレスが日々かかっていましたが、研究中はとてもリラックスできたと述べているので、まさにフローに入っていたのだと推察されます。
また、こんな方法も有効です。それは、「嫌いな上司を思い浮かべる」というものです。そんなにイライラすることを思い浮かべたら、集中できるはずがないと思うかもしれません。そこで重要になるのが、その後に一気にリラックスすることです。 では、リラックスのポイントは何でしょうか?
その答えは「呼吸」にあります。
リラックスは呼吸から始まる
わたしたちは、毎日息をしています。しかし、あまりにも無意識な行為であるため、「息とは何か?」とあらためて問われると戸惑ってしまいます。
分析的に考えると、息を吸うときには交感神経が、息を吐くときには副交感神経が働いています。交感神経は興奮や緊張状態にあるときに優位になるのでストレスがかかる。それに対して、副交感神経はリラックスした状態にあるときに優位になります。
ですから、簡単にいえば、呼吸をコントロールすれば、ストレスもリラックスも自由自在です。息を「スッスッスッ」とたくさん吸えば、それだけストレスがかかります。 一方、「フー」と深く吐けば、大いにリラックスできるのです。つまり、リラックスするには、深く呼吸する必要があるのです。
わたしはスポーツ選手を対象にした研究も行っているのですが、一流選手ほどこの深い呼吸がうまい印象があります。たとえば最近、相撲の稽古を直接見る機会がありました。番付の高い力士と低い力士を比べると、この深呼吸の度合いがまったく違ったのです。
番付が低い力士は、稽古が終わると、呼吸を乱したまま、ゼーハーしている。これでは心拍数が上がって、余計に苦しくなってしまいます。一方、強い力士は、稽古後も姿勢を正し、ゆっくりと呼吸をすることで回復を早めていました。
たかが呼吸、されど呼吸です。深呼吸ひとつとっても、いろいろなやり方がありますが、ここでは「3・2・5法」を紹介しておきましょう。3秒吸って、2秒溜めて、5秒ゆっくり吐く。なぜ2秒溜めるかというと、溜めた方が酸素と二酸化炭素の交換がうまくいくからです。
深い呼吸をするためには、背筋を伸ばすことが必要です。
ノートパソコンやスマートフォンを使うと、どうしても背中が曲がって猫背になりがちです。背中が曲がっていると、横隔膜を使うことができないので、呼吸が浅くなるだけでなく、首や肩が痛くなります。
目線がまっすぐになれば、おのずと背筋は伸びてきますが、肩こりや腰痛を防ぐためには、次の2点も重要です。
① 足をぶらぶらさせず、足の裏をしっかり床につける
② 骨盤を立てて座る
前著『疲れない脳をつくる生活習慣』でも紹介しましたが、お手本は坂本龍馬です。 ①と②が完璧にできています。
この状態で深い呼吸をすれば、それだけでリラックス状態をつくることができます。
集中力が高まる椅子、見つけました
正しい姿勢を保つうえで、ネックになるのがオフィスチェアです。
一般に、オフィスで使われている椅子は、人間工学にもとづいて、どんな姿勢でも身体に負担がかからないように設計されています。背もたれがついているのもそのためです。しかしこれでは、意識しないとなかなか背筋が伸びません。
そこで注目したいのが、トレインという会社が開発した「アーユル チェアー」です。