「うちのクラス初の生徒指導だよ、鈴」
めぐが、こっそり後ろから耳打ちした。
「やっちゃったぜ」
「ねー、あとでどんなことされたか教えてね」
「つか、なんかめぐ嬉しそうなんですけど?」
彼女は高校で初めてできたアタシの友達。
恋バナとおしゃべりとジルの化粧品が好きな、ふわふわした女の子だと思ってたけど、今日はちょっと違った感じだ。頬も少し赤くなっている。
「だってあの先生かっこいいじゃない。あたしもあんな風に、赤いパンプスで世界を変えてみたい」
……どうやらアタシが知らないだけで、ほかにも相当な噂が立っているようだった。
たしかに芽依子先生は赤いパンプスを上履き代わりにしていて、ちょっと変わった先生だけど、こういうのって女子校ノリじゃないかな。
いつのまにか先生の話は終わっていて、話の内容なんか全然思い出せないけど、これからどうするんだろう。
そんなことを思っていると号令がかかって、アタシたちは体育座り。体をよじってめぐのほうを向いた。
「ねーめぐ、もう一限終わりなのかな」
「聞いてなかったの? これから部活紹介が始まるんだって。鈴は部活どうする?」
「茶道部かな」
「わ」とめぐは嬉しそうな声をあげて、「あたしも茶道部目当て」
お菓子好きだもんねー、と言っためぐに、ねー、と同調した。
やっぱこの子わかってるなー。
めぐみたいな気の合う子が後ろの席にいてラッキーだった。
入学初日に思いきって話しかけたら、すっかり意気投合してしまったのだ。中学からの友達もいるけど、今じゃ一番仲がいい。
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