新入社員の「死んだ魚のような目」
あなたが新入社員だとして、そろそろ社を挙げた忘年会の季節が近づいていて、出し物として案の定『逃げ恥』の「恋ダンス」を踊らなければならなくなっている現状に頭を抱えているのだとしたら、心の底から「お気の毒に」という言葉を送る。上司のPPAPは、クオリティが低くてもすぐに終わるから、奴らはあたかもウケが良かったかのように上機嫌に振る舞うだろうが、「恋ダンス」は実のところ、皆が頭に記憶しているサビの部分までそれなりに時間を要すから、クオリティが高くとも地獄のような数分間を過ごす可能性がある。何度か集って練習しなければならない感じもいかにも新入社員向けだが、何がしかのダンスが流行る度、こうして全国の新入社員が怯えることになる。数年前に遭遇してしまった新入社員一同による少女時代の「MR.TAXI」、「死んだ魚のような目」という例えはこうして具体化するのだと教えられた。
シャープに動くであろう藤井隆
藤井隆は、出演している大ヒットドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』のエンディングに流れる「恋ダンス」に参加していない。これを書いている21日の時点では公式Twitterに予告動画として数秒だけ「恋ダンス」の練習シーンを公開しており、近々の放送回で披露される可能性が高いのだが、彼の切れ味鋭い「HOT!HOT!ダンス」、具体的には「○○に出会えてよかった、うれしはずかしオーマイハート、○○に出会えてうれしい僕の体の一部がHOT!HOT!」を繰り返すアレを記憶している人にとっては、待望の登場ということになる。しかし、「恋するフォーチュンクッキー」にしろ、今回の「恋ダンス」にしろ、「おぼつかない感じが逆にカワイイ」という、完璧さを問わないダンスとして流行っている感もあり、絶対的にシャープに動くであろう藤井隆がどこまで歓迎されるのかは定かではない。
書くことがない日の「天声人語」のような話になるが、「行雲流水」という禅語がある。「行く雲のように 流れる水のように 私は自然に生きてゆきたい。あるがままの自分を認め、環境を愛したい。」と、その意味を述べたのは、藤井隆の妻・乙葉である(乙葉『10years』)。祖父の家に飾ってあった言葉「行雲流水」がいつしか自分の座右の銘になったのだという。「天声人語」のような説教口調を続けると、しかし、この言葉の意味を「あるがままの自分を認める」とするのはやや好都合であり、本来の意味には「諸行無常」という言葉が持つのと同じく、すべてのものは移り変わるのだから、世の無常を引き受けよ、という含意がある。どちらかといえば、「自分」よりも「世」に軸があるのだ。
自らを「ミスター・オーラゼロ」と称してきた
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