その日、笑福亭鶴瓶はラジオの公開収録のため、あるホテルのプールサイドにいた。
プールには、普通に泳ぐために来た人、公開放送を見るために来た人など、多くの人で埋め尽くされていた。
鶴瓶はそんな光景を見ながらいつものように軽快にしゃべっていた。
しばらく、しゃべってふとプールに目をやると、そこにいるはずのない人の姿があった。
なぜかプールにプカプカと浮いているのだ。
遠距離恋愛中の怜子である。
怜子の行動力が起こした運命の事件
のちに妻となる玲子は、大学卒業後、実家のある松山に戻り会社勤めをしていた。
数日前から玲子は会社の有給を取って松山から大阪に訪れていた。だが、この日は帰らなければならない、もう飛行機に乗るために空港に向かっていないといけない時間だった。
プールにプカプカと浮いている玲子を見て鶴瓶は焦った。
(何してんねん? 間に合わないやないか)
玲子は鶴瓶の視線に気づくと、鶴瓶の心配をよそにのんきに手を振り始めた。
そして、小さな紙切れを掲げ、それを細かくちぎったかと思うと、紙吹雪のように散らしてしまった。
プールに美しく散る紙吹雪。それは帰りの飛行機のチケットだったのだ。