占い師は、わたしのオデコ付近をみつめながら、まるでわたしの中の何かを読み取りながら話しているようにこう言った。
「あなた……、いつも肝心なところで、うまくいかないんじゃない?」
12干支中、11干支くらいの人には当てはまりそうなこの一言。
だけどわたしはそのとき、まさに自分のことだけを見破られ言い当てられた!と思い「いや、ほんとにその通りなんです!!!!(震)」と真剣に感動していた。
彼女はこうつづけた。
「いまあなたは、本来発揮できるはずのパワーを、うまく出せないでいるの。流れを邪魔されてる。もったいないよ? 常に自分を浄化して、エネルギーをめいっぱい出せるようにしないと」
それを聞いたときまさかのわたしは、ガンガン頷き、“言われてみると、納得できる。ずっと、なにかに邪魔されてる気がしてた!だからうまくいかなかったのか!”と衝撃を受けた。
このときの従順さは竹筒のうえに流されるがままの素麺でした。
占い師は水を4つ床にならべ「この水晶の間に、立ってみて。あなたの場合、体からあふれるエネルギーを感じられると思うから」と言った。
わたしは、やはり流されるまま「この人が言うならエネルギーを感じないわけない」と思い込みながらそこに立ち、“なにも感じない自分”を置き去りにした。
そして、私は目を見開き「た し か に … !」と答えた。洗脳完了である。
彼女は続けた。
「あなたは、いま、結界の中にいるの。この水晶を家におけば、家に結界がつくれるの。強い結界が」と。
「石はこわいよ、力が強いから。とくに水晶は」
「石はこわいよ、力が強いから。とくに水晶は」
「石はこわいよ、力が強いから。とくに水晶は」
かつて母からいわれたこの言葉の恐さは、このとき、なぜかこの占い師の水晶トークの説得力をあげた。いま、わたしには絶対的な、強いパワーが必要なのだ!と。
「いくらなんですか?」と聞くと、20万円、と言われる。
貯金がぜんぜんなかったわたしは、想像よりうんと高いその価格に、”さすがにこれは物理的に払えなそう”と断る理由を見つけどこかホッとした。だけど占い師は間髪いれず、「みんな、たいてい、分割だよ!」と続ける。「このまえあなたと同い年の子も、分割で買ってたよ」「月2万でいいよ! 特別ね!」
買ってしまったのは、全部アレのせいだ。
わたしは買ってしまった。
そして、初回に触れたように、そのことを今まで誰にも話せなかったし、何度も言うがそれどころか3万円の石を買った人を「買う人いるの?!」と笑っていた(重ね重ねごめんなさい)。
なぜ誰にも話せなかったのか。恥ずかしかったからだ。
なぜこのタイミングでポロっと担当編集さんに話してしまったのか。
その「恥ずかしさ」の正体を客観的に説明できるほどに、そのときの自分から脱したからだ。
当時は説明できなかったが、いまはわかる。
わたしにその金を払わせたのは全部アレのせいだ。
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