これはわたしが数年前、誰にも秘密で、20万円もするパワー高まる水晶を買ってしまったこと。
そして現在、それを新聞紙に包み、実家の片隅に封印してしまうまでの、壮大なメンヘラ・イン・ワンダーランドなノンフィクションである。
買ってしまったときわたしは、酔いつぶれたわけでもなく、脅されていたわけでもなく、不思議の国に迷い込んだわけでもなく、正気の沙汰だった。いや、洗脳されていたという可能性は否定しきれない。
ただ、すべてを話す前に、なによりもまずお伝えしたいことがある。
わたしは、この連載でほとんど何もかもを包み隠さずエッセイとして書いてきた。
だけど今回のこの件ばっかりは、一生スルーし口に出さないでいようと思っていた。最近になって突然この連載の編集担当者さんにこのことを話してしまうまで、夫にも家族にも誰にも、この話をしなかった。
あれだけ恥ずかしいことを書いてきたのに、なぜこの件ばかりは書きたくないのかとよくよく考えていたら、最大級の黒歴史おばけであるからという理由だけではないことに気付いたのだ。
それはなぜかというと、強く、「ガチでスピリチュアルだと思われたら絶対やだ」と思っていたからのようだ。この件に触れないとこの物語にうつれない。この、世間様に「絶対スピと思われたくない問題」から紐解いていきたい。
なにせ、20万円の水晶をこっそり買ってしまった当初、友人の友人が同じ占い師から3万円の石を買ったらしいという話をきいたとき、バレたくない一心で、「えー!!? ほんとにそういうの買う人いるの?!(爆笑)」と全力でバカにしてました(ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい)。
絶対スピと思われたくない問題
ガチスピ、つまり“ガチでスピリチュアルなことを信じている”と思われたら人生おわると思ってた。
まず、スピとは定義はさまざまだろうが、ざっくり言うと、科学的に裏付けの取れていない、魂とか氣とか運勢とか霊的なものとか……、「目に映らないもの全般」とします。
そんなスピとの距離感(スピレベル)は大きくわけて5ギアあると思う。
①拒否スピ:全スピが信用ならない!
②許容スピ:神社でお詣りはするし、出産や受験などの一般的なお祓いも許容。
③趣味スピ:占いやパワースポットなど、気軽な楽しみとしてスピを取り入れる。
④依存スピ:スピの力を本質的に信じきり、ときに頼る。大切な決め事などスピに委ねることも。
⑤絶対(ガチ)スピ:スピなしでは生きられない。スピであることを恥じない
(それゆえパワーストーンをつけることもSNSでスピ投稿することもいとわない)
結論から言うとわたしはかつて④依存スピで、現在は、ほぼ②許容スピであるものの時々④である。
だけど今回の原稿をかきはじめたとき、わたしは完全に②許容スピになったフリをしていた。
それは「⑤ガチスピと思われたら信用を失う、スピレッテルを貼られる」と恐れたからだった。
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