人類はコンピュータによって「進化」した
——まずは落合さんが何者なのか、というところから話を始めたいのですが……。
落合 まあ、僕、よくわからない人だと思われてますよね。なんでも聞いてください。
——肩書で言うと、計算機科学※1の博士で、筑波大学助教であり、メディアアーティストでもあると。メディアアート※2を手掛けるようになったきっかけは、なにかあったのでしょうか。
※1 コンピュータ自体とその応用についての諸々の学問分野。
※2 既存のメディア装置に対する批評性を元に、発明とインスタレーションを掛け合わせた現代アート表現。
落合 僕が8歳の頃に、Windows95が出たんですよね。それで、コンピュータが一般的に少し身近なものになったんです。
その頃からコンピュータで何か作るということに興味があり、3Dムービーメーカーというソフトで、イラストを描いたり、それを動かしたりしていました。それがきっかけといえばきっかけですね。
——お名前の「陽一」は電気の「+」と「−」からきているとか。ご両親がもともと、科学やコンピュータに詳しかったのでしょうか。
落合 それが、うちはド文系一家で。僕以外はそんな、コンピュータに興味がなさそうでしたね。なので、パソコンもじいちゃんにねだって、なんとか買ってもらったんです。
——今は未来を先取りするような作品を多数発表していますが、子どもの頃にSFは読んでいましたか?
落合 ああ、SFは好きでしたね。いろいろ読みましたけど、一番好きなのはアーサー・C・クラークの『幼年期の終わり』かな。これって宇宙人が地球にやってきて、その影響で人類がもう一段階進化するという話なんです。
でも、現実にはあんなことは起こらないですね。わざわざ宇宙人が来なくても、地球を掘り返すだけで人類が進化することがわかっちゃったんだから。
——掘り返すだけで、とは……?
落合 地球を掘り返したらケイ素(シリコン)が出てきて、それを精製して半導体をつくって、それを組み合わせたらコンピュータができました。
そしてそれらをつなぎあわせたら、「インターネット」っていう人類にとってすごく有益なネットワークができちゃった。
ここで、人類の幼年期は終わったんです。
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