「理想の走り」のカン違い
僕は理想の走りとは足を効率よく動かすことだとずっと思ってきました。
それさえできれば、上半身は勝手についてくると。
ところが、アメリカでトレーニングをしているときに、両足が義足のパラリンピック選手たちが、とても大きく腕を振って走っているのを見て、ふと疑問が浮かんだのです。
もしかしたら上半身をもっと大きく使うことで、地面に力を加えるサポートができるのではないか。
実際に試してみると、最初は違和感があるのですが、なじむと体が前に進む感じがします。自分が正しいと信じていた走り方が、必ずしも正解ではなかったことに思い至りました。上半身とともに全身を使った走りこそが、究極の走り方であることを学んだとき、僕はもう引退を考える時期に差し掛かっていました。
ソクラテスが言いたかったこと
何かを極めるほど、人は対象について「わかったつもり」になりやすいものです。