仕事前にジェットコースターに乗るといい?
—— では、フロー状態になるための、やりかたを教えていただけますか?
西本真寛(以下、西本) はい。フローに入るには、全部で4つのステップがあります。
1.強い感情を感じる/ 2.一気にリラックスする /3.目標行動の実施をイメージ /4.動作に入る前のルーティン
これらを仕事のシーンに合わせて説明していきます。まずは、「強い感情を感じる」。よくあるのは、締め切りのプレッシャーですね。「やらなきゃ」という焦りや恐怖を感じるということです。
石川善樹(以下、石川) 僕の場合は、強い興味がわいてワクワクするという感情を高めることが多いですね。むしろ、興味が高まらないと、その仕事を始めないくらいです。
左:西本真寛さん、右:石川善樹さん
西本 あとは、高い目標ですね。この仕事でこういうことを達成するんだ、という希望を持つのも有効です。
—— あの、そもそも興味がもてない仕事の場合はどうしたらいいですか?
石川 そういうときは、別の感情を呼び起こせばいいんです。やりたくない仕事なら、「なんでこんなことやらなきゃいけないんだ!」という怒りでもいい。
—— なるほど(笑)。学生時代に、すごくかったるい単純作業のアルバイトを、なにくそって、超集中してやったことありますが、あれですか。あと、怒りとか焦りとかワクワクの感情を呼び起こすといいとありましたが、その仕事に関連するものじゃないと効果ないんですか?
石川 そんなことないですよ。強い感情ならなんでもいい。例えば、仕事前にジェットコースターに乗って恐怖を感じてもいいんです。
—— へぇ! じゃあもしかして、朝、家で夫婦喧嘩してイライラしたり、満員電車で不快な思いをするのも有効なんですか?
石川 そうなんです。アインシュタインは、一般相対性理論をつくったときは、奥さんとの離婚訴訟で「金払え」などと言われて、むちゃくちゃ怒ってたんですよ(笑)。それがきっと、彼の仕事にいい影響を与えたんだと思います。脳はただ感情の強さに反応するだけで、仕事に関係あろうがなかろうが、内容は区別してないんです。
—— 脳ってそういうところは意外と単純なんですね。
西本 そして、強い感情を感じたあとに、一気にリラックスします。
石川 この落差が大きいほど、脳からいろんな物質が放出されるんです。リラックスが大事なんですね。
—— 旅行に行くとアイデアが浮かびやすくなる、のとも関係してしてそうですね。すごい景色を見て感動して、温泉に入ってリラックスする。感情の高揚とリラックス、どっちもできますもんね。でも、日常で怒った後とかにリラックスするのって大変そうですが、どうしたらいいんですかね。
石川 単純なことなんですが、ゆっくり息を吐くんですよ。呼吸を整えると、ひとはリラックスします。気をつけるポイントは、息を「吐く」ことから始めること。よく緊張した時に、「深呼吸しろ」と習いますよね。でも、そこで息を吸うところから始めると余計緊張してしまうんです。だから、まずは吐きましょう。
—— (息を吐いている)……なるほど。吸うより吐く方が重要なのか。たしかに、そうですよね。吐かないと吸えないし。
石川 そうなんです。
西本 あとは定番ですが、かわいい動物などの癒やし画像を見たり、落ち着けるようなハーブティーを飲んだりするというのも有効です。それから、開き直りも大事です。締め切りに追われていて、「どうしよう終わらない」と焦ってばかりでは、いつまでたっても集中できない。いったん、「まあ終わらなくても死ぬわけじゃないし」と考えリラックスすることで(笑)、次の行動に移れます。
—— 楽観的になることも大事なんですね。
西本 もう一つの方法は、自分を客観視すること。ミュージシャンの矢沢永吉さんとサッカー選手の本田圭佑さんには、共通点があるんですけど、何かわかりますか?
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