アシスタントがエンジンを突然入れた。前方に目をやると駐車禁止を取り締まってる男たちが2人見えた。
「この辺り、とりあえず一周しますね」車は、左にカーブして大通りにでた。幸運なことに車量はまだまばらだった。関口が腕時計を見た。ボクも時間を確認する。タイムリミットまであと40分を切っていた。
ワゴン車は大きく中目黒を一周して、また駅の脇の立ち食いそば屋の前に向かっていた。関口はずっと佐内とスーの話をしている。
ボクはそれを聞きながら、あの頃の今よりもっと不確定で不安定だった心情を思い出して、心臓がすこし硬くなった気がした。
「朝だよ」スーはとても優しい笑顔だった。
仕事に出て行こうと身支度をするボクに、裸のままうつ伏せに寝ていた彼女がポツリと言った。
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