私はちゃんと覚えている。
14歳の君は、今日も無駄な時間を過ごしてるなと思いながらラスボスを殺していた。
校則通りにきちんと着たセーラー服を脱ぎすててカバンを放り君は帰宅直後に優等生モードをオフにする。米軍基地の中で買ったバカみたいにデカいエルモのTシャツを着て、バカみたいな顔だなエルモって、と思いながらクレアラシル洗顔フォームで顔を洗う。ニキビをつぶす。赤ニキビより黒ニキビをつぶすほうが好きだなと君は思う。
両親は働きに出ている。弟は部活の時間だ。君だけが帰宅している。麦茶を飲み、ベビースターラーメンを袋から口に注ぎ、あー、なんか金を稼ぎたいな! って思う。
けれども君は14歳だ。
基本的に働けない。なのでいずれ社会人として立派に働く日に備え君は学ぶべき時にあるのだし、国民のみなさまが納付した税金をもとに公立学校において無償で提供された国語数学理科社会英語などの教科書が君のカバンにはあるのだし、君はベビースターラーメンを食い終わったらたぶん勉強をしたほうがいいんだけど、やるべきことがはっきりしすぎていてなんか恐い。
右にしか走ってゆけないスーパーマリオブラザーズみたいだ。
ぴょいん! ぴょいーん! とAボタンでジャンプすればちょりーん! ちょりちょりーん! と金が手に入る。すごいね。でもアクションゲームは苦手だ。あまり考える時間をもらえないから。あと、走っていくべき方向が右と決められているから(※90年代当時)。
そのことがなんか、恐いから。
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