日本の産休・育休制度は、実は恵まれている?
—— お二人の目からみると、女性の雇用環境は日米でどう違いますか?
篠田真貴子(以下、篠田) アメリカは、ずっと厳しいですよね。日本のほうがだいぶ恵まれていますよ。
渡辺由佳里(以下、渡辺) 確かに、制度的にはアメリカが一番厳しいんじゃないか、ってくらい。
篠田 日本みたいな育休、産休制度がまったくないから、リセットする以外に選択肢がないんですよ。保育園なんかも、公的補助ゼロです。
渡辺 以前、Facebookが4ヶ月の産休制度を導入して、休職中にお金を出すと発表しましたけど、それがすごく話題になったのは、そもそもそういう制度がないからですよね。Facebookに就職したら、産休っていうのが取れるんだ、っていう。もうベースが全然違う。
—— それでも、アメリカの女性は仕事も子育てもしている人も多いわけですよね。制度がなくてもやっていけている理由はなんなのでしょうか?
篠田 それはやっぱり、前例があるからでしょうね。制度がないなか、試行錯誤してきた先輩方はたくさんいらっしゃるわけです。
渡辺 そう、先輩から教えてもらえるんですよね。住み込みの子守りの人を雇ったり、お料理を簡単にしたりして、家事は手抜きできるわよ、とか。
篠田 私の理解だと、日本とアメリカを比べたとき、アメリカにはたしかに制度はないんだけど、一方で労働市場の流動性はすごく高い。つまり別の会社で働いて1回辞めても、自分がこれまでにやってきたことを、普通の会社がちゃんと見てくれて、評価してくれる土壌が整っている。
渡辺 その会社で働いているときから、この職歴を次の職場にどう売り込むのか、ということをけっこう考えていますよね。
篠田 はい。それに加えて、外国人の労働者に合法的に家事のお手伝いをしてもらえる仕組みがあるので、日本よりは、手頃に家事を回せる手段があるんですよ。
トイレ掃除は雇ってするもの
渡辺 そもそも、家事に対する期待値が日本より低いですよね。
篠田 ええ、すごく低いですね。日本人はみんな、家庭内の掃除、洗濯、育児はこうあるべし!っていう意識が高いんですよ、アメリカと比べると。