​人であふれる美術展、若冲に群がったのはサブカルか暇な老人か【第91回】

上野の東京都美術館で行われていた「生誕300年記念 若冲展」、あまりの人気に320分待ちで給水所まで置かれたと話題になりました。サブカル好きが集まったとも言われたこの美術展ですが、実際に並んでいる人たちを見ると、どうやらそうとも限らないようで……。現代の美術と消費のされ方を考えます。

上野系に集まる老人と、非上野系に集まるサブカル

速水健朗(以下、速水) 5月末まで上野の東京都美術館でやっていた『若冲展』に大行列ができてたの、覚えてる?*
* 若冲展に長蛇の列、4時間待ち「なんで...」給水スポットも出現 ? - ハフィントン・ポスト

おぐらりゅうじ(以下、おぐら) 最大で4時間待ちとも言われてましたね。あまりの待ち時間の長さに「若冲展待機列SF」がツイッターで話題になったりもしました。「若冲展に並び始めてもうどれくらいたったろうか」の書き出しで始まったりする、時空を超えた創作SFを多くの人が投稿して*
* 若冲展待機列SFという新ジャンルが爆誕 ? - Togetter

速水 結局、1ヶ月で44万人の入場者数があったらしい。若者に注目されている、みたいな文脈で紹介されていたのを見たけど、実際に列を見た感じシニア層が多かったよ。エジプト展やダ・ヴィンチ展みたいな、上野で普段やっている美術展のお客さんって、品のいい高齢者、つまり暇そうな老人しかいないんだけど、若冲展も基本はそんなだった。おぐら君は、普段から美術展行くんだっけ?

おぐら 僕はcakesで「片桐仁のアート探訪」の構成をやっていて、不定期ですが片桐さんと美術展に行っているのと、テレビブロスでは作家の山内マリコさんが美術展を巡る連載を担当しているので、仕事関係だけでも行く機会は多いかもしれません。

速水 一方、非上野系、例えば六本木ヒルズの森美術館とかに行くと、あーファッショナブルでちゃんときれいな格好をしている人たちって、こういうところにいたんだ、って思うんだよね。例えるなら、90年代のカフェブームで深夜の中目黒とか渋谷に行っていたような人たち。

おぐら カフェブーム、ありましたね。あの頃は、僕も『カフェ・アプレミディ』のコンピレーションを買って、今は無き原宿の「あかりcafe」とか、渋谷の雑居ビルの6階にあるカフェとかを必死にディグってましたよ。当時付き合っていた彼女がガーリーフォトブーム直撃で、いつも一眼レフのカメラを持ち歩いて、小さなギャラリーで写真展をやったりとかしていて。それで2010年の小沢健二「ひふみよ」ツアーの会場で、10年ぶりくらいにその子と会ったんですよ……。フェイスブック情報を人づてに聞いたところ、もう結婚してるみたいなんですけどね。写真はまだやってるのかなぁ。いまは家族を撮ってるのかなぁ。今年の「魔法的」も行ったのかなぁ……。

速水 その回想、まだ続く?

おぐら はっ! すみません! つい先日、ちょうど小沢健二の「魔法的」ツアーに行ってきたのもあって、思い出に浸ってしまいました……。

速水 オザケンの「魔法的」は、当然チケット入手困難かと思いきや、転売目的であろうネットオークションの高値スタートが軒並み手つかずだった。ちなみに、我が家にもひふみよ全公演をあらゆる親族の名義で応募した40代オザケンファンがいるんだけど、「魔法的」はパスだったな。「オールスタンディングは辛い」って。そういう40代ファンは、今回多そう。ツイッターでも「譲ります」みたいな投稿けっこうあるし。

おぐら それは気合い入れてたくさん抽選に申し込んだ人が複数当選して、結果的に余っちゃった的なやつでしょうね。

速水 「シッカショ節と朗読は勘弁」みたいな雰囲気もあったけど、実際行った人たちからは今回の「魔法的」はすごく評判がいいみたいで。

おぐら まだツアーは続いているので詳細は言えないですが、みんな新曲の良さに圧倒されながら、往年の名曲も観られて大満足、という感じだと思います。

速水 ちなみに、あのオザケンのファンたちは、普段はどこにいるんだろうなんて考えたりするけど。

おぐら 上野以外の美術館にはいる感じがしますよ。清澄白河の東京都現代美術館に行ったりすると、そういう雰囲気の人をよく見かけますね。あとは、谷根千とか?

速水 どうだろう。ちょっと違う気もするな。谷根千も上野に近いせいか、、昼間は老人の団体ツアーとかが増えてて、かつて色濃かった「ことりっぷ」感も薄くなっている。

おぐら とりあえず、『若冲展』以外の美術展で最近話題になったのは、『美少女戦士セーラームーン展』『ピクサー展』ですかね。

速水 どちらも大人から子どもまで楽しめる、考えられた展示だね。他にも最近行って感心したのは「旅するルイ・ヴィトン」展(~6月19日)。鉄道、自動車、飛行機といった具合に、乗り物ごとに展示されていて、いかにヴィトンが旅行のテクノロジーと結びついてきたかを見せてくれるので、ヴィトンのバッグに興味がない乗り物マニアでも楽しめる。美術展は、大抵5分で飽きる俺でもかなり楽しかった。あとは永井博展(~7月4日)もよかった。

若冲はサブカル? 若冲展に人が集まった理由
この続きは有料会員登録をすると
読むことができます。
cakes会員の方はここからログイン

1週間無料のお試し購読する

cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。

人気の連載

おすすめ記事

この連載について

初回を読む
すべてのニュースは賞味期限切れである

おぐらりゅうじ /速水健朗

政治、経済、文化、食など、さまざまジャンルを独特な視線で切り取る速水健朗さんと、『TVブロス』編集部員としてとがった企画を打ち出し、テレビの放送作家としても活躍するおぐらりゅうじさん。この気鋭のふたりのライターが、世の中のニュースを好...もっと読む

この連載の人気記事

関連記事

関連キーワード

コメント

imushun1226 若冲。良いよねぇー。 https://t.co/j4H9h8XliA 3年弱前 replyretweetfavorite

imushun1226 若冲。良いよねぇー。 https://t.co/YnekWA1Sbk 約3年前 replyretweetfavorite

imushun1226 若冲。良いよねぇー。 https://t.co/U4Fozp5dm8 約3年前 replyretweetfavorite

ncbgs_f この記事、読み逃しててショック。//人であふれる美術展、若冲に群がったのはサブカルか暇な老人か https://t.co/5LdNiFp0dF 3年以上前 replyretweetfavorite