
桜ノ雨
作詞・作曲・編曲:halyosy ボーカル:初音ミク
友達だ
聞くまでもないじゃん
十人十色に輝いた日々が
胸晴れと背中押す
窮屈で着くずした制服
机の上に書いた落書き
どれもこれも僕らの証し
思い出の数だけ涙が滲む
幼くて傷付けもした
僕らは少し位大人に成れたのかな
ふわりてのひら
心に寄せた
みんな集めて出来た花束を
空に放とう
今はまだ・・・
小さな花弁だとしても
僕らは一人じゃない
廊下で零した不平不満
屋上で手繰り描いた未来図
どれもこれも僕らの証し
人を信じ人を愛して学んだ
泣き
笑い
喜び
怒り
僕らみたいに青く青く晴れ渡る空
ゆめのひとひら
胸奮わせた
出会いの為の別れと信じて
手を振り返そう
いつかまた・・・
大きな花弁を咲かせ
僕らはここで逢おう
僕らが巡り逢えた奇跡
幾つ歳をとっても変わらないで
その優しい笑顔
ふわりてのひら
心に寄せた
みんな集めて出来た花束を
空に放とう
今はまだ・・・
小さな花弁だとしても
僕らは一人じゃない
大きな花弁を咲かせ
僕らはここで逢おう
わたしは迷子になってしまった。
今日の授業はすでに終わり、部活へ急ぐ人や帰宅する人たちが廊下を行き来していた。その生徒たちの上履きは、わたしと違う色……。
だから、ここはきっと上級生の校舎なのだろう。
窓から、体育館を囲むように植えられた桜が一斉に散っていく姿が見える。
授業が始まった初日の放課後。わたしはなんとなくそのまま帰りたくないと思って、入学したばかりの校舎を見て回ろうとしたのだけど、見事に帰り道がわからなくなってしまった。一年生の下駄箱はどっちだろう?
仕方ない。
勇気を出して、上級生に訊いてみようとしたとき。
どこからか優しいピアノの音が聞こえてきた。
その響きはどこか切なくて、だけど心を奮い立たせてくれるようなメロディで、わたしはふらふらと導かれるように階段を上がっていった。ちょっと怖い上級生のお姉さんより、このピアノを弾いている人と話したいと思ったのだ。
二階まで階段を上がったら鮮明に音楽が聞こえてきた。ちょっと傾いている古い扉の上には、なぜか手書きで第二音楽室と書かれたプレートが掲げられている。
ノックをして演奏を止めちゃったら失礼かな。
そう思って扉に手を置いたら、きい、と音を立てて開いてしまった。
音楽室の中、ピアノを弾いていた男の人がわたしを見て、次いでわたしの上履きの色を一瞥して、寂しそうに微笑んだ。
それが、先輩とわたしとの出会いだった。
残念だけど、そのとき何を言ったのかは憶えていない。
だけど。
「未来(ミク)さんは、もう部活決めた?」
自己紹介の後、初めてわたしの名前を呼んでくれた先輩の声は、今でも鮮明に思い出せる。
「いえっ、まだ全然」
「だったら、一度合唱部に見学に来なよ」
「合唱部?」
「そう。今日は短縮授業だから休みだけど、明日の放課後にはみんな集まってくるからさ」
わたしは高校生活が楽しくなりそうな予感に後押しされ「はいっ」と勢いよく返事をした。
それが、すべての始まりだった。
【人物紹介】
未来(ミク)
音浜高校の二年生。明るい性格で、合唱部ではソプラノのパートリーダー。少し天然なところがあるため、部員や先輩から親しみを持ってよくからかわれている。
瑠華(ルカ)
音浜高校三年生。合唱部では副部長をしており、アルトに所属。雰囲気や言動が大人っぽく、いつもどこか一歩引いたような位置にいる。
鈴(リン)
音浜高校一年生。元気がよく、おてんば気味なところがある。熱血タイプなのか、一度ハマってしまうとやる気も行動力も人一倍になる。
蓮(レン)
音浜高校一年生。鈴とは幼馴染で、よく振り回されている。性格が素直で真面目なため、その場の空気に流されやすいところがある。
海斗先生
音浜高校の教師。合唱部と調理部の顧問をかけ持ちしている。合唱部での存在は薄いがピアノの腕は悪くない。調理部ではいつもアイスばかり作っているとの噂も。
芽衣子先生
音浜高校の教師で英語担当。また合唱部の顧問。絶対音感を持っており、指導の「ポイント」は間違っていないが、指導の「方法」がとにかく厳しい。
めぐ
音浜高校一年生。鈴とは同じクラスで、感覚が合うのかすぐに仲よくなった。言動は女の子らしいが、ふと大人っぽい一面を見せることもある。ピアノが弾ける。
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