「スーパーでは1円単位で安い商品を探し求める主婦が、健康食品にはいとも簡単に高いカネを払うのだから、健康食品マジックは凄まじい」
沢丞・川崎幸病院副院長は、患者のほとんど全員が、1度は健康食品に手を出していると話す。
特に慢性病を患っている場合、医者にかかっても、すぐさま病気が治るということはない。ならば健康食品で何とかならないか。そんな切実なニーズが背景にある。
健康食品の売り口上には、そうした思いを刺激するような文言が並ぶ。「天然由来だから安心(薬は人工物)」「自然治癒力を高める」「現代人に圧倒的に不足している栄養分を補う」──。さらに、有効性を示唆する科学データと、「これで命が助かった」「もう一生手放せません」などと商品を絶賛する口コミがワンセットだ。
しかし、沢医師は「健康を取り戻すというのは本当に大変な作業。バランスの取れた食事、適度な睡眠と運動。これらを毎日継続する必要があるのだから」と話す。時間のかかる努力はしたくない。すぐに健康が欲しい。そんな怠け心が健康食品に手を出す動機になっていないだろうか。