「私の兄弟は骨肉種という、いわば“骨にできるがん”だったんですけど、この商品を飲みだしたら1年半後には進行が止まったんですよ」
健康食品を中心に業績を拡大するマルチ商法大手の説明会場を訪れると、社員による薬事法違反にも思えるトークが行われていた。
会場は80人前後の60~70代の高齢者たちで満員状態。その大半は女性だ。
まずは宇宙人が出てくるアニメ映像を見せられ、このマルチ企業の主力商品の成分が、いかに長生きに役立つのかが説明される。最後まで話を聞いた人は試供品がもらえるとあって、誰一人席を立とうとはしない。説明会が終わると茶と菓子が振る舞われ、すぐさま愛用者たちの体験談の発表会が始まる。
「動かなかった足が動くようになった」「大きなイボがなくなった」などといった話が、笑いを織り交ぜながら披露され、最後は大きな拍手で終わった。
外資系の参入で
トラブルが続発
1970年代以降、健康食品市場の成長を長らく牽引してきたのはマルチ商法だった。特に外資系マルチ企業が続々と参入した90年代後半には、マルチ企業が健康食品市場の約半分を占めていたとみられる。
だが、それも今や昔である。図2‐8の通り、過去10年間でマルチ企業の全売上高は9400億円から7800億円に減少している。
理由の一つはテレビやインターネットを使った通信販売の台頭だ。
そして二つ目は、マルチ商法への社会的批判の高まりである。