茂木健一郎 /北川拓也
【
第2回】どこまでもつきまとう、肩書きコンプレックス。
ハーバードで研究を続ける若き理論物理学者・北川拓也と、日本に拠点を置き、縦横無尽に活躍する脳科学者・茂木健一郎。両者の対話によって、日本とアメリカの文化、教育の違いを浮き彫りにしつつ、沈み行く日本がここから変革を起こすことができるのかを探る。
今回浮き彫りになったのは、どんなに才能があっても、世間の評価が気になるというジレンマ。それは、世界的な理論物理学者として活躍する北川でも逃れられないもので……。これからの時代をどう生き抜くかというテーマにもつながる、若者共通の悩みが明らかになる。
世間の評価をとるか、やりたいことを貫くか
茂木 ところでさ、北川くんはなぜ日本に戻ってきたの?
北川 8年間ハーバードにいて、理論物理学者としてそれなりに業績をあげて、いざ教授になろうかというときに、ふと「僕は本当に教授になりたいのか?」と思ってしまって……。
茂木 ふっふっ。
北川 えっ、おもしろいですか。
茂木 そんなこと考えているんだ。大変だね、君も。

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この連載について
茂木健一郎 /北川拓也
日本経済が停滞して久しい。一方で、アメリカではIT産業の新しい成功モデルがどんどん生まれている。この違いはどこにあるのか。
ここで登場するのが2人の天才。高校卒業後、8年間ハーバード大学で活動している理論物理学者・北川拓也。一方、1...もっと読む
著者プロフィール
1962年生まれ。脳科学者。ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー、東京工業大学大学院連携教授。東京大学理学部物理学科、同大学法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学研究員を経て現職。専門は脳科学、認知科学。「クオリア」(感覚のもつ質感)をキーワードとした、心脳問題についての研究を行なっている。全国各地での講演活動や、テレビ出演、雑誌への寄稿など精力的に活動し、Twitterのフォロワーが50万人を超える(2013年8月現在)など、その発言は若者から中高年まで多くの日本人に注目されている。
Twitter:@kenichiromogi
1985年生まれ。灘中学校、灘高等学校を卒業。高校時代に化学オリンピックで国内最優秀賞を受賞。高校卒業後、現役でハーバード大学に合格。数学、物理学科を専攻し、ダブルメジャーで最優等の成績をとり卒業。その後ハーバードの大学院に進み、2013 年、博士過程を修了。今までに15本以上の論文が国際雑誌(Science, Nature communicationsなど)に取り上げられ、その内の3つの論文が編集長に特別に重要な論文として指定された。世界中の物理学者と共同研究をし、これまで20以上の研究所や国際学会で招待講演をしている。現在は、楽天でデータサイエンスのチームを率いている。
Twitter:@takuyakitagawa