クリエイターだったから、うつは抜けやすかった
田中圭一(以下、田中) 僕たちはコンテンツを消費するのが大好きな人間だけど、一方で作品を発表するクリエイターでもあるじゃないですか。
僕は自分がクリエイターだったから、うつから抜けやすかったと思ってるんです。
ずんずん なるほど、クリエイターには、すさまじい承認欲求がありますからね。
田中 そう。例えば、ちょっと何かをネットにアップして、いい反応があったら「俺の感性は、正しかったんだ!」と思って、前向きになれます。
ずんずん クリエイター気質のある人は自分を押し殺さないで、もっと自分を表現した方がいいですよ。文章を書いたり、漫画や絵を描いたり、踊ったり、歌ったり、どんどんしちゃえばいいと思います。
田中 何かを表現するっていう「自分を肯定できる手段」があるなら使わない手はない! 『うつヌケ』の取材をしていて分かったのは、自分を肯定する手段を持たない人は、一度自信を取り戻してうつから抜けても、自己否定しがちな状況に陥ったとき、またうつになってしまうんです。
ずんずん 他人からの承認は、うつにつながる自己否定に対抗できるわけですね。
田中 そうです。何かを生み出して、人の役に立てたり、面白いって言ってもらえたりすると、やっぱり心が救われるわけです。「自分も、人の役に立てるんだ!」と思うと、自分を否定しなくなるから、クリエイター気質はうつヌケに役立つと思う。
うつヌケツールとしてのSNS
田中 今はSNSに文章を書けば、拡散されて「この人の言葉で、気持ちが楽になった」とコメントをもらえる時代だから、絵を描いたり、曲を作ったりする才能がなくても、表現して認めてもらうこともできますよね。
ずんずん ええ、そう思います。実は私、2回目のうつの時期からツイッターにどハマりしていて、毎日一生懸命ツイッターをやっていた時期があったんです。
田中 え! どんなことをつぶやくアカウントだったんですか?
ずんずん プロフィール写真を韓国のマイナー女優の顔にして、ひたすら下ネタをつぶやくアカウントでした(笑)。心が病んでいたので、そういう遊びに夢中だったのかもしれません……。
田中 うつの時って、そういう遊びをしちゃうよね。
ずんずん これも「うつあるある」なんですかね?(笑) 田中先生も、そういう経験がおありですか?
田中 僕の場合はmixiでした。まず、ネットで拾った可愛い女の子の写真でアカウントを作ったんです。次に、そのアカウントと自分の本物のアカウントをマイミクして、自分のつぶやきにツッコミを入れさせる、「可愛い子とのmixi漫才」という遊びをしていました。今から考えると、なんでそんなことやってたんだろう(笑)。
ずんずん 田中先生もそんなお遊びを……(笑)。私もきっと、下ネタをつぶやくことで、自分を癒してたんですね。ありがとう、ツイッター!
田中 今は悪い面ばかりが強調されるSNSだけど、SNSに救われたうつの人もきっと多いはずだと思う。
ずんずん まさに「うつヌケツールとしてのSNS」! 私は2回目のうつヌケ後もツイッターやアメブロを続けているんですけど、ネット上で何かを表現して、人とゆるやかに繋がることの癒しの力は、やっぱり大きいと思います。
うつは、2回やるとやさしくなる
田中 あと、これは”うつあるある”とは少し違うかもしれないけど、僕は「うつは2回やると、みんなに優しくなる」と思うんです。
ずんずん それ、すごく分かります!
田中 僕の仕事関係の人で、めちゃくちゃドジる人がいるんです。約束は忘れるし、送るはずのものを送ってくれなかったり、うまくいっていた仕事相手との間に入って台無しにしたり……。正直、腹が立っていたのですが、冷静に考えると、「この人、うつやっているな」と。
ずんずん:やってそうですね……。
田中:その人を見ると、「うつの時の自分は他人から見て、こんな感じだったんだろうな」って思うようになりました。
自分はちゃんとやっているつもりなのに、ミスが多いし、大事なことを忘れちゃう。でも、仕事仲間にはうつが原因だと分からないから、「何ふざけてるの?やる気ある?」とイライラさせてしまう。でもうつの人は、そのイライラや指摘をいじめのように受け取ってしまうんですよ。
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