若者をスポイルするたくさんのソーシャルメディア
『アメリカの少女たち:ソーシャルメディアとティーンエイジャーの隠れた実態』(American Girls: Social Media and the Secret Lives of Teenagers)というアメリカのベストセラー書籍に、唖然とするようなティーンの人間関係の実態が描かれていた。
ソーシャルメディアによっていじめが悪化しているだけでなく、若者のジェンダー意識、性行動、人間関係に大きな負の影響が出ているというものだ。
※ニューズウィーク日本版にレビューを書いたので、書籍の詳細についてはそちらをご覧頂きたい。
ソーシャルメディアはアメリカの少女たちから何を奪ったか
ツイッターやフェイスブックを利用している人は多いが、YouTubeやPinterestまで使いこなしている人はあまりいないだろう。また、40歳以上でInstagram 、Vine、Tumblrを使いこなしている人はほとんどいないし、Snapchatやperiscopeに手を出す人はさらに少ない。
それらのすべてを仕事で使っている人ですら、「それ何?」と聞き返すようなソーシャルメディアがある。上記の本に登場するティーンがよく使っているYik YakやKikがそれだ。
Yik Yakは、サウスカロライナ州フルマン大学の男子学生2人が在学中に考えついたものだ。近くにいるユーザーと繋がって「群れ」を作り、写真、ビデオ、メッセージをシェアする、というものだ。互いのエントリをupvote(良い)、downvote(悪い)で評価し、それがYakarumaと呼ばれる得点になる。そこが競争心を煽りやすく、依存度も高める。
ユーザーにとってのYik Yakの最大の魅力は、匿名性にある。匿名なので普段なら口に出せないことを赤裸々に語りやすく、発言に責任を取る必要はない。「王様の耳はロバの耳」と大声で叫ぶ穴のような存在だ。
しかし、「匿名」と言っても、半径2.4km圏内という狭い場所なので、同じ高校や大学の学生が「(特定の女性の名前)は、あばずれだ」という噂や悪口を書き込む「ネットいじめ」(cyberbully )の温床になりやすい。あまりにも悪名が高くなったので、禁止する高校も出てきたようだが、それで使用をやめたりはしないのがティーンだ。
ソーシャルメディアの残念な現場
取材のため実際に数日間にわたって全米の大学の書き込みを覗き見してみたところ、多少の差はあるものの、いずこも「昨夜寝たビッチは最低の女」といったトイレの落書き的な投稿で埋まっている。大学により雰囲気には違いがあるが、言葉遣いのひどさにかけては、ハーバード大学などのエリート大学も似たようなものだ。
Yik Yakで実際にあった書き込み
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