A.堅実指向の荒岩家、子どもたちのおこづかいはちょっと少なめ!? まこと高校生時は月4,000円!
荒岩家の教育方針は、子どもの自主性を重んじ、のびのびと自由に育てる「荒岩メソッド」。そんな荒岩家の子どもたちのおこづかいはいくらなのだろう。
荒岩家のおこづかい事情がうかがえるこんなシーンがある。 まことが高校2年生のとき、予備校の夏期講習の気分転換にうなぎ釣りの露天に通うシーンがあるのだが、まことは慣れない塾通いによほどストレスが溜まっていたのか、8日連チャンで通っている。うなぎ釣りは一回500円。まことは8回目でやっとのことでうなぎを一匹釣り上げ、「おかげで今月の小遣いパーになったよ」と証言していることから、高校2年生のまことのお小遣いはおよそ4千円ということになる。
○93巻 cook.900 P177 まことのストレス発散方法はゲームでも漫画でもなく「うなぎ釣り」©うえやまとち/講談社
荒岩家は高校生までは学業や部活を重視する方針なのか、まことはアルバイトをしていない。それでこのお小遣いだと、携帯代金が別だとしても、ちょっと少なめかな……という気はする。
まことが高校2年生だった当時(2005年頃)、高校生の平均のお小遣いは6千円台。まことは周りの友達よりも2千円ほどお小遣いが少なかったことになる。
荒岩家は年収1千万円越えのけっこうな高所得なのに……!
これには荒岩家の「我が子には金銭的な贅沢はさせまい」という固い決意が感じられる。荒岩はシングルマザー家庭で育ち、虹子の実家もそれほど豊かではなく、大学時代は交際していた荒岩と一緒に貧乏な学生生活をエンジョイしているので、「手にしたお金が少なくとも心豊かに楽しく暮らせるような子に育てたい」という思いがあるのだろう。
少ないお小遣いが、まことのおねだりスキルを鋭く磨き上げる!
そんな豊かな心を持つ両親の想いを一身に受けたまこと。少なめのおこづかいにも文句ひとつ言わずに賢くやりくりしているに違いない……と思いきや、ここでまことの思いがけないスキルが発動する。まことは少額ゆえに、おねだりスキルを磨いているのだ。まことが中学生のとき、休日の部活にかこつけて虹子からおこづかいを引き出す流れをご覧いただきたい。
○60巻 cook.592 P130 細かくせしめるまこと©うえやまとち/講談社
いきなり「臨時こづかい」と言われたら、虹子のほうは部活に行った帰りの飲食代と思うだろう。
虹子が最初渡そうとした300円は、コンビニで菓子パンと飲み物が買える金額。中学生の買い食いとしてはまあ妥当だ。しかしまことの真の狙いは、好きなアーティストの2枚組CD(4.800円)を買うこと。コツコツ少ないお小遣いを貯めたけれどあと500円足りない。300円ではだめなのだ。
そこでまことは、あえて金額を言わずに「もうひと声!」と要求している。
そして虹子はもう200円を足して500円を与えている。これはなに気にすごいスキル。もし最初から「500円ちょうだい」と言っていたら、「そんなになにに使うの」と追求されかねない。一気に500円引き出すことは難しくても、一旦300円を出させてそれから値上げ交渉したほうが目的の金額を引き出しやすい。
中学生でこの交渉術はすごい。
荒岩家が狙ってやっているのかそうでないのかはわからないけれども、おこづかいを少なく設定することによってまことのコミュニケーションスキル、交渉術が磨かれていることは確か。中学生の時点でここまでデキる男ならば、このまま成長すればスーパー営業マンや敏腕弁護士になるのも夢ではない。
しかし、まことは500円をせしめてCDを買おうとしたものの、この直後に虹子から買おうと思っていたCDを不意にプレゼントしてもらう。「このグループ かあちゃんも大好きだから後で聴かせてね」とのこと。
○60巻 cook.592 P133 ボーナスステージ来た©うえやまとち/講談社
荒岩家のおこづかいシステムは金額的にはちょっと少なめだけれど、いつも倹約を迫られるだけでなく、こういう突然のボーナスのようなものがあるのだ。こうなると、まことがCDを買う分の4,800円がまるまる浮く。
4,800円、高校生に取っては大金。
私が高校生のときだったら、「漫画? 洋服? なにを買おうかな~!」とワクワクするところだが、ここでもまことは凡百の高校生との違いを見せつける。
まことのお金の使い方、その中学生場慣れした「デキる男」ぶりに注目!
まことは浮いたお金全額で、虹子の好物であるマツタケを買うのだ。