素人丸出しの編集作業
念願の『TVブロス』での初仕事、「SMAP解散シミュレーション」特集の取材を終えた私だったが、雑誌編集者はレイアウトをデザイナーと決める必要があることを知った。取材した内容(文章・写真・イラスト)だけでは、雑誌の誌面にはならない。文章・イラスト・写真を組み合わせたレイアウト案をデザイナーに提出し、その人のデザイン作業を経てようやく雑誌の誌面になるのだ。
私自身、これまで雑誌の編集はやったことはなかったが、『日経エンタテインメント!』と『セブン』のライターやデータマンの仕事をする中、編集者(大澤さん・嶋さん)の仕事のやり方を見ることにより、なんとなくレイアウト案を作るやり方は予測がついた。
レイアウトとは、雑誌を誌面にするにあたっての設計図を作るようなものなのだ。雑誌はきれいにデザインされたものが多いが、それの下書きを編集者が紙に描くのである。この部分に写真を配置し、これだけの文字量の見出しにつけ、本文は何文字である……。こうしたことの指示書なわけだが、これを「ラフ」と呼ぶ。ブロスの編集部の場合は「ラフを描く」という言い方をするが、後に仕事をする別の雑誌の場合は「ラフを切る」「ラフを引く」という言い方をしていた。多分、どれでも良いのだと思う。
K編集長に連れられ、Qという名のデザイン事務所に行った。場所は東急東横線の都立大学駅近く。紹介されたデザイナーは死んだ目をしたメガネの若い男だった。後に「メガネ」と呼び、妙に仲が良くなるこの男、最初は互いに良い感情は持っていなかったと思う。
何せ彼からすると私は素人丸出しのラフを描いているわけで、「なんでこんな素人をK編集長はボクにあてがうんだヨ!」と思っただろうし、こちらとしては、「チッ、業界歴が少し長いからってバカにしやがってヨ! オレの方が多分お前より年上だゾ!」と卑屈になったからである。向こうの方では、K編集長が他のデザイナーやデザイン事務所社長と談笑しており、私はとんでもない疎外感を覚えていた。
素人丸出しの説明打ち合わせとなったが、なんとかメガネにすべてのイラスト・写真を渡し、後は彼にデザインを組んでもらうという段階になった。「多分2日くらいかかると思います」とメガネは言った。ここで、編集者としての仕事は一旦終了である。
編集者が生殺与奪を握る雑誌の仕組み
ライターとの違いをここで感じることになる。それは、企画というものはすべて編集者が握っているということだ。一体どれほどのスペースをその企画内で取るかについては、すべて編集者の判断による。
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