「それで先生……、結局私はどんな健康食品を取ればよいのでしょうか?」
ある病院で糖尿病患者を専門に診ている医師は、10年ほど前からこんな質問をされることが多くなったという。それも、聞かれるのは「薬を処方し、効能や飲み方を説明した後」だというから驚く。薬を処方しても、「健康食品に薬“以上”の効能を期待する患者が増えている」と感じている。
確かに、健康食品は医薬品と違って処方箋なしで買うことができるだけに、安易に手に取りやすい。病気を治したいという気持ちが強ければ、なおさらだろう。
だが、実は健康食品と医薬品には明確な違いがある(図1‐1参照)。
例えば、医薬品は病気の治療に用いられるため、医師・薬剤師の管理下での使用が大前提となる。薬は効果が強いため、“害”にもなりやすいからだ。
一方、健康食品はあくまでも健康な人が、足りない栄養素などを補う際に利用するもの。成分や製品の選択は、個人の判断に委ねられているのだ。
さらに、品質管理の基準も大きく異なる。医薬品は、薬事法の下、GMPと呼ばれる品質管理基準で徹底的に管理されているが、健康食品には医薬品のような規制はないため、品質が一定である保証はない。
最大の違いは、効能・効果をうたうことができるかだ。医薬品は、厳しい審査と厚生労働大臣による製造販売承認を経て、効能・効果をうたうことができる。だが、食品は基本的にそうした表示を許されていない。
つまり、私たちが日々スーパーや薬局で見かける「健康によい」として販売されている健康食品は、「どんなに“効き目”をうたっているように見えてもあくまでも食品」(厚労省)。法的な規制も一般食品と同じ。つまり、買う側も医薬品のような効能・効果を期待してはいけないというわけだ。