古くから、「病は気から」といわれるが、これはまんざら迷信の類いではない。
1955年、米ハーバード大学の麻酔科医師、ヘンリー・K・ビーチャー氏が発表した論文によれば、手術後の傷の痛みをはじめ、頭痛や狭心症、咳などさまざまな症状を訴える1082人の患者を対象に、食塩水を注射したり、乳糖を与えたりするなど、“偽薬(ぎやく)”を処方したところ、実に35%の患者の症状がはっきりと改善したというのだ。
こうした偽薬のことを「プラセボ」と呼び、本物の薬だと信じ込むことによって症状が改善することを「プラセボ効果」という。
効果には「値段」が影響するという研究結果も存在する。
米マサチューセッツ工科大学で、82人の治験者に電気ショックで痛みを与えた後にプラセボを処方。1錠の値段を、半数の治験者には「10セント」、残りの半数には「2ドル50セント」と伝えたところ、「痛みが和らいだ」と答えた比率は前者が61%だったのに対し、後者は85%に上ったという。
健康食品にも、この「プラセボ効果がある」と指摘する医療関係者は多い。詳しくは後述するが、健康食品は薬ではないので、本来、大きな効き目や即効性はないはずだ。
にもかかわらず、「健康になった」「症状が改善した」といった声が上がるのは、「消費者が薬と同等の効果があると信じ込み、プラセボ効果が表れている証左」(医療関係者)というわけだ。
しかも、値段が高いほうが効果も上がるとすれば、メーカーにとってはありがたい話。健康食品の値段が意外に高いのも、こうした事情が関係しているといえるのだ。