「俺の居場所はどこに今度あるんやろか?」
1989年9月29日。
ダウンタウンは2人揃って泣いていた。
その日、『4時ですよ~だ』(毎日放送)が最終回を迎えた。ダウンタウンが大阪で〝天下〟を獲った番組である。
この番組の終わりは、ダウンタウンの東京進出の始まりを意味していた。
今田耕司に呼び込まれ、心斎橋筋2丁目劇場のスタジオに入った時には既に2人の目には涙が光っていた。
会場につめかけたほとんど全ての若い女性客も泣きながら歓声をあげていた。
大号泣。
そんな形容が過剰でないほど、あのダウンタウンが人目も憚らず泣きじゃくっていたのだ。
「ありがとーう!」
会場に、テレビの先の視聴者に向け、2人は声をからしながら恥ずかしげもなく叫んだ。
「うん、そうや、終わろう。これ以上やっててもしょうがない。おんなじことの繰り返しやな」
松本は自分にそう言い聞かすようにつぶやきながら、その日を迎えようとしていた。
いよいよ自分たちのホームグラウンドである『4時ですよ~だ』を終わらせ、次のステップへ進む時が来たのだ、と。
その頃には、ダウンタウンは多忙を極めていた。『4時ですよ~だ』を始めとする大阪でのレギュラー番組に加え、『夢で逢えたら』など東京での仕事も数多く舞い込んでいた。もうダウンタウンの人気と才能を大阪でとどめておくことはできなくなっていた。
「ところが明日が最終回ぐらいになった時に、こう、ものすごい寂しさがあって。うーん……。『うん……終わる? 終わるのか? ほんまに』って(笑)」
他の大阪のレギュラー番組も既に〝整理を終えていた。だから、『4時ですよ~だ』が終わった翌日になればもう東京に行かなければならない。支えてくれてきたスタッフや後輩たちとも別々の道を進まなくてはならない。
「ちょっと話あんねんけど」
そんな風にナーバスになっていた松本に追い打ちを掛けるように浜田が声をかけた。