おぐらりゅうじ(以下、おぐら) 今回は、新刊『かわいくおごられて気持ちよくおごる方法』(幻冬舎)の出版記念ということで、はあちゅうさんにゲストとしてお越しいただきました。
はあちゅう お呼びいただき、ありがとうございます。お二人の連載で私の名前が出ているのを見ていたので、今日は対決みたいになってしまうのではないかと、ちょっと心配です。
おぐら もうっ、速水さんが「はあちゅうは理由なき自己啓発みたいな人だから」とか言うから!
速水健朗(以下、速水) いや、でも今回の主旨としては、本のタイトルにもある通り、僕とおぐらくんではあちゅうに気持ちよくおごろうってことだから。そのために、このお店を選んだわけだし。
おぐら とりあえず、乾杯しましょうか。
全員 かんぱーい!
おぐら って、はあちゅうさん、めちゃこわがってるじゃないですか……。
はあちゅう 正直こわいです。
速水 まぁ、話をしながら少しずつ打ち解けましょう。
はあちゅう よろしくお願いします。
デートスポット「骨董通り」の衰退
おぐら じゃあさっそく速水さんから、本の中で気になったところは?
速水 おもしろい本。1994年にホイチョイプロダクションズの『東京いい店やれる店』が出て、2012年には『新東京いい店やれる店』という続編も出てるんだけど、この本ってデートのための食について書いた本であり、文化論、都市論でもあるんだよね。今回のはあちゅうの本も文化論だよね。
おぐら 本のもとになった連載のタイトルは、すばり『東京いい店 やられる店』ですからね。
速水 うん。中でも骨董通りの店を知らない男のデート力の低さを否定しながらも、実は自分も最近まで知らなかったんだっていうくだりが好き。
はあちゅう ありがとうございます。
おぐら 骨董通りって、時代によって見え方が違いますよね。僕は大学が青学だったので、2003年くらいはかなり近くで過ごしてましたけど、当時は全然行かなかったです。スタバの下にある「fai aoyama」っていうクラブに行ってたぐらいで。
速水 僕の時代に骨董通りのクラブといえば「blue」。アレックス・パターソン*1もジャイルス・ピーターソン*2もここで見た。
*1 アレックス・パターソン:イギリス出身のプロデューサー/DJ。クラブ系チルアウト/アンビエント・ミュージックに大きな影響を与えたプロジェクト、ジ・オーブの一員として知られる。
*2 ジャイルス・ピータソン:世界的に大きな影響力を持つ人物として知られるDJ/レーベルオーナー。アシッド・ジャズと呼ばれるジャンルのキーパーソン。
はあちゅう 私が骨董通りを社会人になるまで知らなかったというのは、大学時代も青学の裏あたりには行ってたんですけど、骨董通りっていう言い方をしてなくって。移動でタクシーとか車を使うようになって、初めて認識した感じです。
速水 それはすごく正しい。なぜ骨董通りが重要かっていうと、駅がないから。西麻布もかつての麻布十番も、駅がないからデートスポットとして価値があった。でも80〜90年代の骨董通りは、デートスポット。それが00年代は一度衰退するんだよね。
おぐら 僕はともかく、はあちゅうさんが大学時代に知らなかったっていうのは、もちろん年齢的なこともあるでしょうけど、骨董通り自体がそんなに盛り上がってなかったから、というのもありますよね。
はあちゅう 知らなかったとはいえ、林真理子さんのエッセイを読んでいたので、骨董通り=都会の人が集まる一番イケてる場所みたいなイメージはあったんです。場所がどの辺かも認識はしていたんですが確信はなくて。でもある時、とあるお店に行こうと思って電話で道を聞いたら「骨董通り沿いです」って言われて、「骨董通りってどこですか?」って聞き返したら「いや、どこって言われても……」って。
速水 本のまえがきでも書いてましたけど、一食も無駄にしないようにおいしいお店を探求していろんなところに出掛ける人と、デートに行く時ですらお店を予約しない人とでは、見えている東京が全然違う。両者ではライフスタイルが一切交わらない。この話は、すごいわかる。
食べログ3点以下は理由がほしい
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