公的年金を補う私的年金の制度が変わる。自分で毎月一定の掛け金を出し、それを投資信託など運用に回し、老後に受け取る個人型確定拠出年金(個人型DC)の制度が大きく広がるのである。
法案が国会を通過すれば、2017年度までに「誰もが私的年金に入れる時代」が到来する。
現在の公的年金制度が形作られた04年の年金大改正──。与党の自民党・公明党は100年安心だとうたった。当時、制度改革に携わっていた学識研究者が“予言”していたことがある。
「公的年金だけで老後が安泰だなんて、絶対にあり得ない。自分で何とかしなくちゃいけない。それには、確定拠出年金制度などをもっと広げていかないと、間に合わない……」
04年制度改正の狙いは、それまで上がる一方だった年金保険料に上限を設けながら、徐々に積立金を取り崩し、長いスパンで年金財政のバランスを取るところにあった。ただし、保険料と積立金だけではバランスが保てない。大盤振る舞いを続けてきた年金給付の抑制も欠かせなかった。
すでに01年にスタートしていた個人型DCは、そうして抑えられる公的年金を補い、「老後の資産形成」を後押しする切り札のはずだった。ところが、個人型DCの加入者は20万6000人(14年末)と、対象者のわずか0.5%にとどまる。
これで間に合うのか。15年4月、個人型DCの大幅拡大・普及を促す改正案が出されたのは、当然の流れだったのである。これまでの自営業者、企業年金制度のない会社員に加え、新たに主婦や公務員、企業型DCへの加入者なども対象に加えることで、対象者2700万人増と、現状の1.7倍とする。まさに「誰もが入れる時代」に、いよいよなるわけだ。