昨年暮れに日本で行われた「夫婦別姓」にまつわる裁判は、記憶に新しい人も多いと思います。
この裁判というのは、「夫婦が別々の姓を名乗れないなんて、おかしい! それは憲法違反じゃないのか?」と訴える内容です。
パリでこのニュースを聞き、まるで「原告の女性たちが、日本国家という大きな怪物に向かって戦いを挑んでいる」イメージが浮かび、固唾を飲んで行方を見守る思いでした。
私が住むフランスではどうかというと、基本的に夫婦同姓+旧姓も持ち続けるスタイルです。
今回の日本の裁判のニュースをきっかけに、改めて自分のフランスでのIDを見てみると、基本的に旧姓・現姓、両方が記載されています。
日本でいう戸籍にあたる「家族手帳」なるものを発行してくれる役場に問い合わせたところ、「結婚後は公的な書類であっても、旧姓・現姓どちらでも選んで使っていい」とのことでした。
日本で名字が変わることの「寂しさ」と「違和感」
日本では「 結婚したら名字が変わる」。この常識に、私自身は学生時代の頃、なんだかロマンチックな気さえしていました。
退屈な授業中に、好きな人の名字と自分の名前をノートに丁寧に書いては、すぐに消して密かに興奮していたことも……ああ、赤面。
でも大人になってみたら、「ロマンティック」より「寂しさ」や「違和感」が湧き出てくることに気がつきました。
一番最初の体験は、先に結婚していった妹の名字が変わってしまったことです。
彼女が新しい家族を作ることは嬉しくもあるのですが、寂しくもあることです。そこでさらに「妹が私と違う名字を名乗る」という事実が寂しさに拍車をかけるようで、数年経った今でも全く慣れません。
また、友人知人らの結婚式で、「私は嫁に行ってしまいますが……」と、涙ながらに両親へお手紙を読む彼女たちの発言に、もらい涙するどころか
「なんで女が嫁ぐのが基本なんだろう。婿入りってめったに聞かない。他人の家系に嫁いで女だけ名前を変えることが当然なのはなぜ?」
という疑問が沸いている自分に気がつきました。
自分が結婚して別姓を名乗るようになってから
私自身がフランスで結婚して以降、名前で不便を感じた事がありません。
無意識に旧姓・現姓を使い分けることができているので、快適に感じています。名前が変わったというよりも、一つ増えたという感覚です。
旦那さんと同姓になったことで、よかったこともあります。
というのも、結婚した直後に旦那さんが「今日からAyakaはマダム○○だね〜」と、しみじみ、うれしそうに言ったことです。
婚外子も多い、自由な気風のフランスでも、夫婦同姓であることをありがたがる人がいると知った出来事でした。
ここで実際、私がどのように旧姓と現姓を使い分けているか簡単に紹介してみます。
cakesは定額読み放題のコンテンツ配信サイトです。簡単なお手続きで、サイト内のすべての記事を読むことができます。cakesには他にも以下のような記事があります。