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しびれるような知的昂奮をもたらす新しい演出の可能性——『死の都』という文学[六]
20世紀最高傑作と再評価され、現在世界各国で上演されているオペラ『死の都』の最終回。ストラスブール版の現代演出の意図を追います。そして、この作品が、人間が過去に捕らわれつつも、生のエロスにつねに魅了され続けるという、生きることの本質をもっとも単純な形で力強く描き出していることに迫ります。
根底から意味を変えるストラスブール版の演出
ストラスブール版もフィンランド版とは別の方向だが、かなり強い現代演出となっている。オリジナルのリブレットを根底から意味を変更しようとする意図すらが感じられる。この、作品の根底的な逆解釈の可能性、つまり、まったく異なる「読み取り」は知的な興奮をもたらす。古典を読み返すということは、古典をまったく新しい作品として再・創造するとも言えることを示唆する。
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ストラスブール版では、第一幕のメインの舞台となる「去りし者の聖堂」は、場末の酒場か演劇小屋の楽屋か、という荒れた印象の部屋になっている。死者を悼む厳粛さはない。
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この連載について
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「極東ブログ」で知られるブロガーのfinalventさん。時事問題や、料理のレシピなどジャンルを問わない様々な記事を書かれているが、その中でもとりわけ人気が高いのが書評記事。本連載は、時が経つにつれ読まれる機会が減っている近代以降の名...もっと読む
著者プロフィール
ブロガー。2003年8月15日から「極東ブログ」を始める。1957年東京生まれ。20代にプログラマーを経験。30代半ばに沖縄に移住。少女暴行事件を挟んで8年暮らす。ネット名「finalvent」はそのころ見ていた仮面ライダーの必殺技から適当に拾ったもの。「極東ブログ」は右翼とかと誤解されることもあるが、「鉄人28号」的な昭和レトロの趣味から付けたもの。2013年2月21日、ダイヤモンド社よりエッセイ『考える生き方』を出版。他、『もっとも美しい数学 ゲーム理論』(文春文庫) の解説を書いている。
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