代表的な3つの版とメディア
彼の若い日のオペラ『死の都』が蘇るのは、1970年代に入ってからである。まず映画音楽での再評価があり、関連して戦前の彼の活動に人々の関心が向いた。そして時が経つにつれ人々はこれが20世紀最高傑作のオペラであることを再評価し始めたのである。
これからこの「現代演出の意味」を探るために、以下3つの版について、その違いを論じてみたい。
ベルリン版(1983年 ベルリン・ドイツ・オペラ公演)
ストラスブール版(2001年フランス ライン国立オペラ公演)
フィンランド版(2010年 フィンランド国立オペラ上演)
現代日本の文脈で言えば、2014年の新国立劇場オペラでの演出の位置づけとその相対化にも役立つだろう。というのも、2014年の新国立劇場オペラでの演出は以下のフィンランド版の演出を「レンタル」したものだからだ。今後日本でも、そのほかの演出が試みられるようになるだろう。
ベルリン版と『死の都』が辿った足取り
オペラとしての再評価の大きなきっかけは、1975年のニューヨーク・シティ・オペラでの上演であるが、その次の大きなきっかけとなったは、1983年のベルリン・ドイツ・オペラでの公演である。記念碑的な演出となった。このベルリン1983年版の公演を元にした録画映像は、当初LDメディアで販売されたが久しく途絶えていた。
しかし近年のコルンゴルト・ルネサンスの要望から2012年にDVDのメディアで新しく発売された(このメディアには英語字幕はあるが日本語字幕はない)。