「奥さまのお加減はいかがですか。転居を伴う異動は難しいですよね──」。あるメガバンクの人事部員は、半年に1回、全国の支店を巡っている。これはという行員と直接、顔を合わせてヒアリングを続けているのだ。
彼の脳内メモリには、行内の主要な管理職2000人分の個人情報が整理整頓されて、しまわれている。その個人情報の範囲は多岐にわたる。行員のフルネームはもちろんのこと、銀行で最も重要な入行年次、顔、出身大学──。実はこの程度ならば、人事部中堅クラスならそらんじているという。
転歴、過去の信賞必罰、直近3年分の評点、簡単な適性、家族構成──。この辺りから、プロの領域に入っていく。冒頭の人事部員もその1人といっていい。