「文學者の肖像」と銘打っているのに、「鳥居みゆき」が登場とはこれいかに? そう思う向きはあるかもしれませんが、実は彼女こそ文學者なのです。
テレビや舞台でのお笑いのイメージが強いのは当然ですが、鳥居さんの活動はそこに留まらない。自身の舞台公演では原作まで担当しているし、これまでに2冊の小説を世に送り出しています。それは、又吉直樹さんが『火花』を書くよりも前からのこと。
それに、ジャンルを問わず鳥居さんのすべての表現において、核となっているのは言葉であり、物語です。よく考え、磨き抜かれた言葉を、こちらもよく練られたストーリーに乗せて次々と繰り出すことによって、鳥居さんは笑いや恐怖や哀しみを生み出しています。
そんな鳥居さんがこの秋、取り組むのは、みずからが率いる劇団「東京ギロティン倶楽部」の公演『幸福論』。
人と接することは世の中で一番おもしろくて、難しい
ソロで活動を長年続けてきて、単独ライブも定期的に開いているのが鳥居さんです。でも、今回で2回目となる「東京ギロティン倶楽部」では、オーディションで出演者を募る劇団形式を採用。共同作業で作品をつくり上げようと考えたのには、何か理由が?
単独ライブのほうは全部、自分でプロデュースしているんですよ。ネタはもちろん構成も演出も衣装も。だからこんどは、人といっしょにやってみようじゃないかと始めたのが東京ギロティン倶楽部。そういうのもおもしろいかなとおもって。 ほかの人の脳味噌を借りてみたら、違うアプローチも見えてきたりしそうでしょ?
とはいえ、鳥居さんの舞台やネタを見たことのある者ならだれしも、あの強烈な個性や世界観のなかに、他の人が入っていけるものなのか……、とおもってしまいます。鳥居さん自身、自分以外の他の要素が入ってくることに納得したり、うまく折り合いをつけたりできるのですか?
それをやってみるのがおもしろいんだ!って感じですね、自分の中でこの舞台は。たしかにわたしは、自分のやりたいことが侵されるのはイヤなタイプですよ。前にコンビ組んでお笑いやっていたこともあるんですけど、そのときはちょっとでも相手がアドリブでもしようものなら、「お前、よけいなことすんじゃねえ!」ってイラッとしてました。 だけど、そうやってつくる以外にも可能性があるってことに、さすがに気づくようになったんです。
すこし大人になられた?
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