10月第4週の主なできごと
・加工肉「発がん性ある」 WHO、過剰摂取に警告(10月27日)
・ダルビッシュ投手の弟 野球賭博で逮捕(10月27日)
・ソフトバンクが2年連続日本一(10月29日)
・モー娘。エース、鞘師里保が卒業を発表(10月29日)
・ハロウィーン渋谷 機動隊数百人(10月31日)
「一億総活躍社会」とニコ生火事事件
速水健朗(以下、速水) 「一億総活躍社会」。これが安倍政権が掲げた新しいスローガンなわけだけど、あまり評判がよくない。でもそのセンスのなさを腐す声がどれもセンスに欠けている気がしたので、僕らはマジメに考えてみようかと。
おぐらりゅうじ(以下、おぐら) 子育て中の女性も家族の介護で働けない世代にも、フレキシブルな雇用体系で働ける社会とか、そんな感じですか?
速水 もっと本音は、高齢者に働けって言ってるんだと思う。全医療費の約6割を占める高齢者医療費は本当に危機的状況で、高齢者に自己負担してもらうような制度改正はマストなんだよね。そう考えると前提として、働ける高齢者には、まだまだ働いてもらわないと。
おぐら 国民年金も支給開始年齢は、これからも上がっていくでしょうし。
速水 高齢者の労働で思い出したけど、先月、動画の生配信中にオイルマッチを使って家が火事になった事件があったじゃない。
おぐら ありましたね。買ってきたオイルマッチの使い方が分からずに、オイルがこぼれてテッィシュで拭いて、そのオイルがついたティッシュをゴミ袋に入れ、そこにマッチを捨ててしまって、一気に炎が燃え上がるという。しかも最初くわえ煙草でしたよ。
速水 対処としてやっちゃいけないことを全部やったんだよね。段ボールで叩いて消えず、さらに布団であおいでもだめ。しかもなぜか段ボールも布団も火にくべて燃やしちゃうの。当然、火はどんどん大きくなって。
おぐら 部屋を出て消火器を持って来るのかと思いきや、小さい洗面器を持って現れて、チョロっと水をかける。もちろん、焼け石に水でしたけど。ちなみに、Amazonではこの動画が話題になった直後に、消火器が品薄になったとか。
速水 それはともかく、この火事が翌日の新聞で報道されてニコ生主が40歳で親と同居の無職だったことがわかった。さらにショックだったのが、この燃えちゃった家の主、つまり彼の父親が68歳で、肩書き「契約社員」だったこと。何かリアルで。
おぐら 68歳になっても、そうそう悠々自適に暮らせるわけではないということですね。
速水 いろんな意味で、活躍せざるを得ない社会。
おぐら 一億総活躍社会という意味では、40歳のニコ生主も、ここから再就職ができるような社会であることが重要です。
速水 彼はいわゆるロスジェネ世代でしょ。バブル崩壊後の就職難だった時代に社会に出て、就職できなかった人たち。
おぐら 「ロスジェネ」の言葉がもてはやされた7、8年前には30代前半で「若者」だった世代が、非正規雇用のままスライドしている問題は、今はあまり取り上げられないですからね。
速水 最近この世代は、本当に影が薄くなっていて、首相官邸ドローン事件の容疑者も、JRの施設の連続放火事件の容疑者も、みんな同じ世代。だけど、彼らが置かれた雇用状況なんかの話にはまったくならないんだよね。
「つまらない」を望む視聴者たち
おぐら この火事動画は、「バカッター」なんかを上回るインパクトと啓蒙性がありました。生配信中は視聴者がたった4人だったのに、YouTubeに転載されて1000万回以上再生されてます。
速水 彼は「マインクラフト」っていうオンラインゲームの実況をやっていて、その流れのままオイルマッチの使い方について動画配信していた。その視聴者が4人で、火事に気づかないニコ生主に「うしろうしろ」って教えていたり。
おぐら 気になったのは、4人とはいえ、あの内容の薄い配信に視聴者がいたんだ、っていう部分です。知り合いにもゲーム実況をずーっと見てる大学生の妹がいて、とにかく一日中見てるから、試しにおもしろい映画を薦めてみたところ、「そういうのは疲れるからヤダ」って言われたらしいんですよ。「別におもしろくなくていい」と。