お金は、危なっかしくて素敵なエネルギー
藤野英人(以下、藤野) ヘラクレイトスの「万物は流転する」はすごく好きな言葉です。ギリシャ語で「パンタ・レイ(panta rhei)」。パンタがオールで、レイが流れる。経済学者のケインズの運用会社の名前が、パンタレイなんです。万物は流転するってインベストメントの基本です。
パンタレイの「レイ」の名詞形はレオスなんです。僕らの会社の「レオス・キャピタルワークス」という社名そのものが、行動規範なんです。資本に対して流動性を与えていくということですね。
山口揚平(以下、山口) そうだったんですね。そもそも、お金を藤野さんはどうとらえているんですか。
藤野 お金はエネルギーですね。決して善悪の問題ではない。どう役に立つように使うのか。上手に使えば世の中の役に立つけど、失敗したら爆発してしまう。非常に危なっかしくて恐ろしくもあり、素敵でもあるエネルギーっていうのがキャピタル=お金のイメージですね。
山口 おもしろいですね。僕の専門は貨幣論で、お金に関しては論文でいろいろな定義を見ているのですけど、藤野さんの本を読んだ感想としては、「あっそうか。キャピタル(資本)は“集合知”だな」というふうにすごく感じましたね。
主観を抜け出てみれば、「未来」はいくらでも創れる
藤野 山口さんの新刊『10年後世界が壊れても、君が生き残るために今、身につけるべきこと』は、ストーリー形式で、非エリートも成功するコツを紹介した本ですが、1番のポイントはどこですか?
山口 1番のポイントは未来を見据えることです。一言で言うと「未来を創る」ということです。著書にサインを頼まれたときなどは、下の人に対しては未来を「創れ」、上の人に対しては未来を「創りましょう」という感じで語尾だけ変えて贈っています。
藤野さんの本にもあったように、この縮小均衡社会の中で動けなくなっている人と未来を創り出そうとしている人に二分化しているので、未来を創ろうという人を応援できればいいなと。
藤野 ええ。
山口 たとえば、日本にいても未来が暗く見えることはありますよね。高齢化、階層化、年金……いつも問題が山積み。でも、そんなに悲観することもないわけです。今から日本全体をブランディングするのは難しいかもしれないけれど、ブロックごとにブランディングを考えていく方法もありますよね。海が豊かな瀬戸内海沿岸は日本のイタリアを目指してもいいわけですし、伝統技術と教育水準が高い北陸地域については、北欧をモデルにしたブロックを創ってもいいわけです。藤野さんの話にも通じますが、「自分の主観」を出て実際のところを見てみると、できることは色々あるんです。
「僕はこういう未来を考えるけど君はどう」っていうことを、わかる範囲で言語化した本ですね。
藤野 おもしろいですね。想定している読者はどんな人なんですか?